第9話 婚約者


あれから、2ヶ月という時間が経った。

翔との事が吹っ切れている…訳もなく、未練タラタラだ。



「中野さんの事、すごい好きだったんだね。」



親友のかなみがビールを片手に問いかける。



「そう。本当に好きだったんだ。好きだった、というか…今でも好きなんだ。もう諦めないといけないのにね。」



翔こと、〝中野さん〟とは相変わらず仕事で関わる仲だ。出来れば関わりたくないが、こればかりは、仕方ない。



「あー、例の婚約者?」



「そう。すごい可愛い人だった。翔を見返してやる!なんて思ってた自分が本当恥ずかしいよ。」



飽きたと言われて振られた私だったが、別れた1ヶ月後、実は、彼にはずっと婚約者が居た事が判明した。それと同時に、経理課に突然異動してきたのが、彼の婚約者。名前は、戸田 美希さん。



「まさか、中野さんに婚約者が居たなんてね。じゃあなんで怜と付き合ったんだろ。」



本当許せない。かなみは、そう怒りながら、店員さんを呼ぶベルを押し、ビールのおかわりを注文した。



「今日は飲もう。沢山はき出して、忘れよう!」

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