第8話 南さん
給湯室から出て自分の席へと戻る。
翔の姿はもうなく、ホッとした。
「お待たせしました。」
「ありがとう。」
業務開始の時間になり、皆が仕事に取り掛かった。今日も忙しい1日が始まる。
「これ、お願い出来る?」
「急ぎですか?」
淡々と仕事をこなしていき、定時のチャイムがなる。
「よし、終わったー!」
伸びをして、机の上を片付けて居ると、隣から声がかかった。
「本田ちゃん、今日ってこの後時間ある?」
「今日ですか?」
「うん。」
「ごめんなさい。今日は、寝不足気味なので家に帰ろうと思います。」
「了解。また誘うねー」
南さんにぺこりとお辞儀をし、そのまま、急ぎ足で家に帰った。
「なんか今日は疲れた…」
いつもだったら、翔に帰宅の連絡を入れるけれど、今日からその必要もない。
シーンと静まり帰った部屋。目線を少しずらせば、彼が泊まった時用にと置いてあったワイシャツが目に入る。
「あれ、どうしようか。」
お風呂に入ろうとすれば、彼専用のスウェット。歯を磨こうとすれば、彼の歯ブラシ。紅茶を飲もうとすれば、ペアマグカップ。
一年一緒に居たんだ。
飽きた、と言われた時のことを思い出して、また涙が溢れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます