第6話 様子伺い


「おはようございます。」



「「おはよう」」



挨拶をすれば、いつも通り、課の皆から挨拶が返ってくる。そのいつも通りが何だか嬉しくて涙が出そうになった。



「本田ちゃん、おはよう。」



「南さん、おはようございます。」



南 健太さん。



南さんは、翔と同期。私にとっては直属の上司であり先輩だ。くしゃっとした笑顔が凄く眩しく、太陽みたいなとても温かい人である。



南さんの隣にある自分の席に座る。

ふぅーっと一息吐き、机の上にパソコンや筆記用具を並べていく。整えて居ると、隣から聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「南、これ至急でお願い。」



「おー。ってそこはまず、おはようだろ。ねー、本田ちゃん。」



なぜ私に振ってくる?とひきつる顔をなんとか緩めて、今できる精一杯の笑顔を作った。



「間違いないです。挨拶から始めたいですよね。私、コーヒー淹れてきますね。南さんは、いりますか?」



「いいの?じゃあお言葉に甘えてお願いしようかな。」



「了解です。お砂糖なしのミルク2つですよね。」



「さすが、本田ちゃん!間違いないよ。よろしくお願いします。」



はい、と返事をしながら給湯室へ急いだ。



なんで今日に限って、翔がいるの?

なんで今日に限って、南さんにお願いするの?



なんでそんなに私を見つめてくるの?



「昨日振ったくせに。」



ポツリと1人、給湯室で呟いた。



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