第4話 彼の存在


翔と別れて、ホテルの前でタクシーに乗り込んだ。ここから家までだと、少し遠い。時間もお金も掛かるけど、今日くらいは許してほしい。



運転手に行き先を告げて、ボーッと窓の外を眺める。キラキラと光って居る街並み。いつも見て居る街並みなのに、何故か凄く眩しく感じた。



家に着き、部屋に入り暫く放心状態のままベッドに横たわった。さっきまでの出来事が嘘のようだ。



ブブッと携帯が震えた。携帯を見なくてもそれが何かわかる。



「鍵かけたら、連絡いれて。」



いつも会った後、翔が私に入れる連絡。

すぐそこまで送ってくれたのに、必ずくれる連絡。



「バカじゃないの。こんな時にいつもの連絡入れないでよ。」



プツンと何かが切れたように涙が止まらなくなる。返信なんてできないよ。



だって、これに返信したら翔との繋がりはなくなってしまうでしょう?



その日は、ワンワン泣いて泣いて。こんなに泣いたのは生まれて初めてというほど泣いた。

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