火事から救った女の子から「お礼」と称して甘やかされる
焼鳥
一話「助けたあの子は人気者(助けた当事者は知らない)」
「
「まだですか。」
「全然まだです、私は貴方に返し切れていませんから。」
学校の屋上のベンチで俺は何故、学年随一の人気を誇る子に膝枕されてるのか。
「人生を救われたんです。この恩のお礼は一生しないと。」
「お礼なんて要らないのだが。」
彼女とこんな関係が始まったのはあの事件、いや事故から始まった。
*
「中間終わり~いや赤点回避は出来たかな。」
中間テスト最終日を終え、ここ数日の地獄を乗り越えたからこその解放感を味わう。
「
「すまん、今日は疲れてるし帰るわ。」
「お前体力ある割には気力がカスだよな。」
「言い過ぎ、次は絶対行くわ。」
「OK今日来る女子は俺達がゲットしとくわ。」
「童貞が何を。」
「お前もだろ!」
クラスメイトに別れを告げ、学校を後にする。
俺、
高校に向かう道中で商店街があり、そこにあるお店で大体の学校生活に必要な物が買える。教科書から体操靴、筆記用具から小腹用のおにぎりとなんでもござれだ。
そしてその商店街から少し外れた場所に俺がいつも寄るお店がある。
それは古本屋だ。
父親の
「なんか
外だというのに何かが焼ける
そしてその原因を直ぐに知り事になる。
「嘘だろ。」
燃えていた、目的の古本屋が。
火事が起きたと野次馬が集まっている。皆スマホなどで写真を撮っているが、誰も通報していない。
「何がどうなって。」
店の前に集まっている人の中に見覚えのある人を見つけ、慌てて声をかける。
「爺ちゃん!無事だったのですね。」
「浅見くんじゃないか。」
店長は80歳を超えている高齢だが、その年齢を感じさせないほどに元気な人だ。
「何があったたんだ。」
「急に火の手が上がって。そんなこと話すよりも今は!」
「そんな慌ててどうしたんだよ。」
「中にまだ学生さんがいるんじゃ。」
「は・・・・・マジか。」
もう一度店を見る、入り口からも火が見えるぐらいには燃えている。
正直生きてるかなんて分からない、生きてる方が奇跡だ。
そうだとしても。
「おいあんた、そこのあんただ。あんたは救急車、そこのあんたは警察、あんたは消防車を呼べ。そっちの人は商店街側の公共施設にAEDあったはずだ、それ取ってきて。いいから早くしろ!」
野次馬に語気を荒くしながら指示を送り、俺は近くにあった誰の物かも分からないバケツに水を汲み、そのまま頭から被る。
「浅見くん急にどうしたんだ。」
「タオルありますか、ハンカチじゃダメだ。」
「あぁあるぞ。」
「助かります。」
店長からタオルを貰い、口を守るように巻く。
「助けに行きます。死んだらその時はその時です。」
「何言って。」
後ろで何か聞こえたが無視して火の手の上がる入り口に立つ。
(怖い。)
足が震える。全身がガクガクと震える。
「それでも。」
思い出す。こんな恐怖に飛び込み、人を救った大切な人を。
「父さんと母さんが出来たんだ、息子の俺だってやれるさ。」
一歩を踏み出した。
*
(痛い。)
耳元でチリチリと音が響き、ぼやけている視界は赤で染まっている。
(息が苦しい。)
少しでも息を吸うと喉が焼けるような感覚に陥る。
(なんでこんな事に。)
テストが終わったからといつものように商店街を抜けようとして、脇道を見つけて興味本位で入った。そしたらその先に古本屋があり、覗いた。思った以上に大きいお店で、知らない本が沢山あった。その本の一つを手に取った瞬間、意識が飛んだ。
(体、動かない。なんか眠い。)
徐々に閉じていく視界に黒い何かが映る。それはどんどん大きくなっていき、私の前に立った。
「まだ・・・・・あう、ゴホゴホ。」
(人だ。)
その人は私に何かを被せ、そのまま私を背負った。暖かい感触と揺れが体に伝わる。
赤色の世界が白に変わった時、私の瞼は閉じた。
*
「あれ.....ここは。」
「病院だね。」
気づくとそこは古本屋ではなく、真っ白な病室だった。
「かなり危険だったよ。学生さんが外に連れ出してなかったら死んでたね。」
隣に立っていた医者が淡々と説明する。
「学生さんのその場の処置と対処が適切だったのも大きい。そのおかげで君の皮膚の大部分が守られていた。」
「守られていた?」
「水で濡らした制服を被せていたと聞いている。外に連れ出した後も火の元から離して少しでも煙を吸わせないとかね、もしその学生さんに会えたらお礼をするといい。運が良ければ会えるだろう。」
「どうしてそう言い切れるのですか?」
「同じ高校だったからね。」
医者はその後色んな説明をしてくれた。要約すると、数日は入院し、その後は経過観察、完全に通院完了するのは一か月後ぐらいになるとのことだ。本来ならもっと長くなるのだが、その学生さんのおかげらしい。
「誰だったんだろう。」
優しい声だったことは覚えている。暖かった事も覚えている。
「あのお医者さん!」
「まだ何か。」
「その助けた学生さんのお名前は分かりますか。」
「普通なら個人情報だから駄目だが、今回は特例だ。
「ありがとうございます。」
(救ってくれたその人にお礼がしたい。)
私はその気持ちで胸がいっぱいだった。
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火事から救った女の子から「お礼」と称して甘やかされる 焼鳥 @dango4423
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