第4話 構ってちゃんの杏ちゃん
それから彼女の高校卒業と同時に俺達は結婚した。彼女の構ってムーブは今も変わらず、続いている。
「ねぇねぇ、今度の休みに二人で出掛けたいなぁ。何処かに連れてって!」
「仕事で疲れてるんだよ……。たまにはゆっくりと休ませてくれても良くない?」
「ダメ。私、デートしたい!」
ソファに寝転がる俺に彼女が覆い被さり、猫のように頬擦りする。
何とも言えないむず痒さ。
だけど、彼女にこう言われたら断りきれない事を俺は自分で知っている。
「わかったよ。じゃあ、何処に行こうか」
近場なら映画や買い物、カフェ巡りなどが無難だろう。少し遠出をするなら遊園地や水族館、動物園などのテーマパーク系もある。
彼女と何処に行くかの話し合いをする事、二時間。話し合いの結果、彼女の希望で水族館デートをする事になった。
そしてデート当日。
俺は水族館の入場ゲートの入り口で彼女を待っていた。
待ち合わせ時刻までは、まだ一時間近くもある。欠伸を噛み殺し、俺は静かに彼女を待った。
「ごめん、お待たせ」
待ち合わせの十分前に彼女はやってきた。
白のダッフルコートに膝丈の赤いスカート姿。肩から黒のショルダーバッグを掛けている。
その姿を見た瞬間、俺は懐かしさを覚えた。
だってそれは、紛れもなくあの時の彼女だったから。
「あれ、着替えたんだ? 随分と懐かしい格好だね」
「えへへ、久々のデートでテンションが上がっちゃって。どう、まだ似合ってる?」
「あぁ、あの時と同じ……いや、あの時よりも可愛いよ」
「それ、女として魅力的って事?」
「あはは、そうかも。と言うか、杏はあの時からずっと魅力的だよ」
自分でも歯の浮く台詞だと思う。でも、それが今の俺の嘘偽りの無い言葉だ。
その言葉に彼女の顔がみるみる真っ赤になる。
耳まで真っ赤にした彼女は俺の胸に顔を埋めると、少しだけ顔を上げ、目線を俺へと向けた。
「だったら、これからもっと私に構ってね。約束だよ?」
構ってちゃんの立花さん もくもく @kinmokumoku
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