先に転移していった人たちが選ばなかったスキルしか取れなかったけど、何とか生きて行く
@free123456789
第1話 余り物には”服”がある
「やっしゃいませぇ~」
時間は、深夜3時頃。
今日も俺は、適当にコンビニバイトを凌いでいる。
一日6時間、レジと品出しで行き来しながら定時にやってくる郵便と配達の受取を済ませたりもする。
今は、丁度客も少なく品出しも先程終わったばかりだ。
レジに突っ立ってボーっとしながら体を休めよう。
そう思っていたのに、スーツを着た中年の男がかごの中に大量に商品を入れこちらへと向かってくる。
そんなに買うならスーパー行けよ。そっちの方が安いから。
そしてついに男はレジへと辿り着いてしまった。
溜息を吐くが、対応しないことには始まらないため俺は、俯いていた顔を上げその男と目を合わせ商品を受け取る―――はずだった。
「は?」
目の前に広がっていたのは何もない空間。
そう言葉通り何もない。
商品陳列棚や後ろにあるタバココーナー、そして目の前にあるはずのレジと男。
数秒前まであったものが全て消え去り、上下左右何もなくただ白一色が支配する謎の空間へと彷徨ってしまった。
『よく来たのぅ。選ばれし者よ』
「いや、誰だよ」
『神じゃよ』
何もないはずの空間に突如机と椅子が用意され、俺はいつの間にかそこに座っていた。
対面しているのは、自称神のじじぃだ。
見た目からしてかなり歳食ってるのがわかる。
『酷いのぅ……』
「心読めるんかい!」
『神じゃからな』
どうやら考えを改める必要があるらしい。この自称神を暫定神に。
それとさっきから混乱続きで口調が変になっている。痛い奴とはいえ、初対面の、それも自分よりも歳上の相手に対して敬語が無いとはどうやら思った以上に慌てているらしい。
『疑い深いのぅ。それと敬語は不要じゃ』
「……そうか」
『うむうむ』
暫定神様は、俺の反応に満足いったのか「関心関心」といった感じでうなずいた。
というか心の声が読めるならこちらから喋る必要な無いな。
『まぁ、そうじゃのぉ』
若干、悲しそうな声色だったけどいいか。
それよりもここについて聞きたい。
『ここは世界と世界を繋ぐ場所。儂の後ろにドアがあるじゃろ? それをくぐると異世界へ渡ることが可能じゃ』
異世界! それってもしかして剣と魔法の世界ってやつですか?!
『その通りじゃ。だが、お主が住んでいた場所と違って命が軽いからのぉ。今のままだと直ぐ死ぬわい。ゴブリンに殺されるのが落ちじゃな』
それもそうか。俺、特に武術とかやってないし。
『怖くなったらお主の後ろにあるドアを渡れば良い。そうすると同じ地球に転生するからのぉ。その場合、記憶の継承は無いのじゃが』
えぇ……、どして?
『無いと言ったら無いのじゃ。それよりも異世界に興味が湧いておろう?』
はぐらかされた。
だが暫定神様が言う通り心は異世界に傾いている。
たとえ命が軽かろうと俺は、何も縛りが無い自由な世界へと行きたい。そしていつか、夢にまで見たチーレムを目指すんだ!
『……浅ましいやつじゃのぉ。まぁ、何でも良いわい。異世界に渡って勇者になるも良し。魔王になって暴虐の限りをつくしても良し。お主の好きにせい』
はい! 好きにします! 俺、異世界に行きたいです!
『そうかそうか。なら異世界へ行くがよい。だが、今のままでは死ぬのは確実。そこでお主の身を護る為にスキルを取ってもらう。好きなスキルを5つ選んでよいぞ』
いきなり目の前に透明のボードが出現した。
画面には沢山のスキルが載っている。下にスクロールしても最後までたどり着けない。全てのスキルがあるのだろうか。
ただ、スキルのほとんどが黒く塗りつぶされている。
一体どういうことなんだ?
『それは他の者が既に選んでいるということじゃよ』
「え!?」
転移って俺だけじゃないの?
『そうじゃよ。お主で何人目かのぉ。よく覚えておらんわい。黒塗り状態ということはまだ異世界で生きておるのじゃろうな』
うっそぉ……。残り物から選ぶ必要があるのかよ……。
取れるスキルだけ表示とかできない?
『できるぞい。それ』
ありがとうな。
……表示されたスキルが2つしかないのだが?
『そのようじゃのぉ。スキルも決まったことだし、異世界へ送るかのぉ』
ちょ、おい、待てよ!
え!? 本当にこんなスキルで行くのか!?
命が軽いってあんたが言ったんじゃないか!?
『それじゃ、楽しんでのぉ』
★★★
「はぁ。どうすっかなぁ」
俺は自分のステータスを確認する。
―――
名前:桜木春
種族:異世界人
魔力:10
スキル:裁縫Lv1
―――
「本当にどうすんのぉおおおおお!!!!!」
先に転移していった人たちが選ばなかったスキルしか取れなかったけど、何とか生きて行く @free123456789
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。先に転移していった人たちが選ばなかったスキルしか取れなかったけど、何とか生きて行くの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます