第28話 勇者パーティの能力発動

「な、なんだ、なんでいきなり風が!?」


「俺に天が味方してくれてるんですかね。俺を怒らせるとこういうことになるってわけです」


 これは俺の光の力とジュディルこと淳の風魔法だ。

 トイレの影から見守ってる淳に使用してもらってる。俺の能力の光で辺りを照らし、周囲の風を吹かせる。


 しかし、魔法のないこの世界ではこんなもの一般人にはなんなんのかはわからない。ただの不思議現象としか受け取れないだろう。


 だからわざと天が俺に味方をしていると言って驚かせるのだ。


「ほら、自然が俺に味方する。俺はこういうこともできるんですから、あまり怒らせない方がいいですよ」


「なんだその態度は! そんなわけあるか! てめえ何様のつもりだ!」


「はあ……そうやってキレやすい。だから彼女に振られたんじゃないんですかね」


「んだと!」


 彼女に振られる、それは森崎にとっては怒りの元となる発言だ。それをわかっていてこう言った。


「あなたが保坂君をいじめるっていうから、なんでいじめられてるのかって聞いたら保坂君の妹に振られた腹いせらしいですね。それで兄である保坂君をいじめて憂さ晴らしをして、さらに妹さんに何かするかわからない脅しをかけてると」


「くそ! そんなの関係ないやつが口出しするんじゃねえよ!」



 プライドに関わることを刺激され、森崎は顔を真っ赤にさせた。


「はあ。やっぱ頭悪いやつは嫌だなあ」


 俺は挑発的な言い方をした。あえて相手を逆上させる為だ。


「てめえ、ふざけんなよ!」


 森崎が俺に殴りかかろうとした瞬間、まるで後光のような光が放たれ、さらに凄まじい強風が吹きつけて、森崎はその勢いで後ろに派手に転んだ。


「だから言ったでしょう。俺には天が味方してるって」


「うるせえ、そんなもん信じるか!」


 風に負けない勢いで森崎はその大きな体を俺にめがけて突進してきた。


 森崎は強風を突っ切って全力で体当たりをかましてきたのだ。


 俺は避けることも逃げる素振りも見せず、そのまま森崎の体当たりをまともにくらった。


「あがっ」


 しかし、倒れたのは森崎の方だった。


 森崎の大きな身体が直撃してきたが、それはまるで壁にぶつかったかのように、俺は立ったままで体当たりで跳ね返った衝撃で森崎は自分から大きく転んだのである。


 これはラミーナこと岸野さんの守護魔法だ。

 守備力を増幅させているので俺にはダメージが入らないのである。


 なので衝撃を受けてもダメージを受けず、俺にとってはまるでゴムまりが当たってきたかのような小さい反動にしかならない。


「くそっ」


「おっと」


 森崎が怒って俺に拳を向けてきて、それを受けたが俺はそれを喰らっても痛みを感じない。


 ただ殴られた衝撃で少し振動するくらいだ。痛みは全くないのである。


 これは俺達のチームワークならではだ。

 相手を逆上させ、それで相手が怒ってもしも暴力をふるうならそれをこちらには効かないことを見せつける。

 淳の使う風魔法で不思議な現象を起こして相手をびびせる。そして岸野さんの守護魔法で防御力が上がってるのだから、暴力を振るわれても多少は平気だ。

 どれだけ殴られても俺に痛みはそこまではこない。だから一切抵抗はせずに、無抵抗な相手を一方的に殴ったというシチュエーションにさせるのだ。


「くそっ。なんで倒れねえんだ!」


 森崎は次々と俺に何度も拳を向けてくる。しかし俺にはゴムまりのような衝撃にしかならない。


「それが俺の実力ってやつですよ。観念してください」


「なんだと! 俺からお前に降伏しろってのか!」


 森崎は自分が屈するなんてするものか、とまた殴ろうとしてる構えになった。


「いや、もうその必要はないですね。あなたが俺を殴る意味もありません」

「んだと?」


 その時だ。


 ぴょこ、と森崎の腰のポケットからモモ太が姿を現した。モモ太が森崎のスマホをがっしりと小さな両手で構えて掴んでいた。

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