第27話 いじめっ子森崎と勝負
翌日。
俺がこっそり森崎の靴箱に保坂君の名前で『放課後に駅の方角にある公園に来て欲しい』という手紙を入れた。
こんなことをしてあの森崎が律儀に来るかというとそれは確かではない。なので作戦を使った。
「森崎君が最近授業をさぼっている間に何をしているかを知ったのでそのことで話があります』
こう書けば森崎は自分の秘密を知られてると思い、そのことを保坂君に問い詰めてくるというわけだ。
保坂君にはこの日はあえて学校を休んでもらう。
同じ日に保坂君が学校にいるとそれは保坂君に対面した時点で森崎は絡んでくるだろう。
なので手紙には『今日は家の事情で日中は外に出られないので用事が終わった放課後にその場所に行きます』と書いておいた。学校を休むのならそのままその日の放課後も休んだことで来ないだろうと思われるので日中は用事があるということにするのだ。
そして放課後、俺達は公園のトイレの後ろで待機した。
森崎が一人で公園にやってきた。
あんなことを書いても来るかどうかは確定ではなかったが、さすがに授業をさぼっていることについての秘密に触れられると黙っていられなかったのだろう。
「よし、行ってくるか」
まずは保坂君のかわりに、俺が森崎の前に出るのである。
俺はトイレの影からとことこと森崎の前へ歩いて行った。
不自然さのないように、普通の動きで。
「君が保坂君のクラスメイトっていう、森崎君ですか?」
俺があえて軽々しく話しかける。
森崎は目の前に出てきたのが手紙の差出人である保坂君ではない人物だったことに怪訝な表情をした。
「なんだお前? 保坂はどうした?」
「俺は保坂君の友達です。保坂君、今日は学校を休んでたでしょう? 用事が終わったらここに来るとのことでしたが、用事の時間が伸びて放課後もここに来ることが出来なくなったとのことで俺にかわりに君のところへ行ってと連絡が来たんですよ」
「なんだよ。保坂のダチかよ。じゃあ用事はねえよ。俺は帰るぞ」
保坂君本人ではないのだから用事はないと森崎は帰ろうとしていた。
「というわけにはいかないんですよ。保坂君に聞いちゃったんです。森崎君が最近、授業をさぼって女の子を盗撮してて、なおかつそれを他の人に売ってるって」
「なに!?」
なぜそのことを知ってる? といわんばかりに森崎は身構えた。
「なんのことだ、知らねえよ!」
森崎は大声で叫んだ。
「保坂の野郎、変なことを他人に吹き込みやがって! 俺は知らねえぞ! それは保坂が勝手に言ってる嘘だろ!」
森崎はあえて知らないふりをしようとした。しかしそれは逃げられない。
「じゃあ、その証拠見せてくださいよ。スマホ、持ってるんでしょ? 何もないのならそれでいいんですけど。もしも何か持っているなら……。君がそういうのをやっていないのか、それを確認したいんですよ。でなければ俺は明日にでもこのことを教師に言って聞いてみます」
「ふざけんな! なんでそんなもん見せなきゃいけねんだよ! お前こそ変ないいがかりつけるんじゃねえよ!」
自分が脅されている、それが気に入らないとばかりに森崎は怒り散らした。
「なら確かめさせてもらいますよ」
その一瞬、俺の身体から光が発された。それは周囲を照らした。
さらに俺のまわりに風が吹き始めた。
「なんだこれ!?」
光の眩しさと激しい強風のあまり、森崎は腕で顔をかばうように構えた。
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