第8話 これからやること


 残された俺達は今後について話し合うことにした。


「これからどうすればいいんだ?」


「うーん。とりあえず神の言う通り、人助けをするってことですかね」


「なかなか大変な道のりですわね。ですがフィロ神様も姫を探すとおっしゃってますし、その間私達が何もしないというわけにも」


「じゃあ、やっぱり俺達も勇者としてなんらかの活動をしなきゃいけないってことか」


 俺達はうなるが、なかなかいい案は思いつかない。


 ふと時計を見るとホームルームの時間が迫っていた。


「とりあえず、今後の事は帰ってからゆっくり決めよう。今日は普通に授業を受けていつも通りにしてようぜ」

 その後、俺達は普段通りに授業を受けて一日を過ごした。



 

 学校が終わり、家に帰って自室に入る。


 俺はベッドにどすん、と腰かけた。


「ふう。今日は色々あって疲れたぜ」


 あの夢を見てから前世の勇者の仲間達も同時に覚醒していて、それが同じ学校にいてパーティが揃ったのだ。


 そして神に姫を探せだの魔王を阻止しろだのと言われたのだから今後のことを考えねばならない。


 ふと部屋の隅にあるゲージをちらりと覗くと、モモ太が網の中からこちらを見つめていた。


「ご主人、お帰りなさいです」


 そうだった。学校では俺達が勇者パーティだったことを目覚めさせられたように、モモ太もまた前世では俺の使い魔だったことを思い出したのだ。


 俺はゲージからモモ太を出して両手で包むようにして机の上に乗せた。


「今日もお疲れ様です」


 ポテポテと丸い体、グレーの背中にジャンガリアンハムスター特有の黒い筋が入った毛の模様。


 こうして見るとごく普通のハムスターでしかない。しかし、中身は前世でミニドラゴンだった俺の相棒なのだ。


「モモ太、お前が俺の相棒だったことを思い出したみたいに、学校で俺達の仲間も見つけたよ。俺達と同じようにフィロ神に覚醒させられたんだと」


「ほら、僕の言うこと間違ってなかったでしょ」


「ああ、朝は信じられなかったけど。お前も間違いなく俺の相棒だったポフィなんだな」


「じゃあ僕らだけじゃなかったんですね。学校にも僕の仲間達もいたってことですよね」


 モモ太の前世はミニドラゴンだった。ドラゴンは肉食だ。


 だからモモ太は小動物用の乾燥ビーフが好きだったのだろうか。

 ハムスターにしては植物性なものよりも動物性たんぱく質である肉を好物なのは前世と嗜好が似ててだったのかもしれない。そう思えば納得だ。


 俺はモモ太に学校であったことを話した。この世界のどこかに姫がいるので探せと、そして魔王がこの町に現れようとしていると。


「神様は姫を探せって言っても、どこに姫がいるかはわからないんでしょ。どうするんですか?」


「うーん、そうだな。どうすれば……」


 神は前世と同じく勇者として人助けをしろ言った。

 この世界で前世のように人助け、つまり少しでも記憶をリンクさせるようなことをすれば能力が覚醒させられるかもしれないとのことだった。


 その間にフィロ神は姫を探してくれるようだが、同時に俺達も探さねばならない。


「明日、学校で淳と岸野さんとも話し合うよ」


「じゃあご主人、明日から僕も学校に連れて行ってくださいよ」


 モモ太はそう言い出した。自分も学校に行きたいと。


「お前をか?」


「僕も仲間達に会いたいです。僕もご主人の相棒だったんだから、仲間外れは嫌ですよ」


「確かにお前は相棒だが……」


 といってもモモ太をどうやって学校に連れて行くのだ。鞄やポケットに入れてか?


 学校でもずっと一緒にいる相棒なんてなんだか魔女っ娘アニメのマスコットキャラみたいだな。


 しかし勇者である俺の相棒なのだからモモ太も俺の仲間ではある。



「わかったよ。だけど授業中とか人前には出てくるなよ」

「了解です」


 学校内にペットを連れて行ってはいけない。見つかれば没収どころではないだろう。


 見つかれば騒ぎになるのだからモモ太には隠れてもらうしかないが。


 

 

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