解読不能のファイル

つばめいろ

名称も未設定

 君のパソコンのフォルダに残されたzipファイル。名称は未設定のまま。それでも何かのメッセージが残っているかもと思い解凍する。そこに入っていた言葉は


「蜷帙′螂ス」


 これだけである。「君は消えても私を悩ませるのかよ」思わず言葉を零す。なんとかして文字化けした文章を戻そうとするがやり方が見つからなかった。他のところに戻す方法が残ってるかもしれない。


 君のパソコンの他のフォルダを覗いても全て空。例のファイルしか残っていない。解凍を繰り返しても結果は変わらず、文字化けの文章が出てくる。君は私に何を伝えたかったの? もう君はいないから聞くこともできない。君が残した解読不能のメッセージは私を笑っているように見えた。



 君の言葉は結局わからなかった。でも、きっと君の本心が書かれているのだろう。だから私もそのファイルに本心を残した。君とは違って日本語で。

「君と出会えたときには答えを聞かせて。それまでいくらでも待つよ。愛していたかった君へ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

解読不能のファイル つばめいろ @shitizi-ensei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画