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12月14日 土曜日
朝早く目覚めた。長女の髪を可愛くセットするためだ。久しぶりの朝食準備。おにぎりを頬張る長女の後ろに座り、髪をとかす。カラフルなラバーゴムをふんだんに使って、分け目もジグザグにしたりして。長女は私のセットした髪型を気に入ってくれた。
主人はもっと早くに起床し、長女のお遊戯会をベストな席で見るべくすでに幼稚園前に並んでくれている。午前のうちに終わるお遊戯会を経て、午後には主人が次女の元に面会に、私は長女と1日を過ごす予定になっていた。時刻は8時30分。いま、次女のそばには私の母が付いてくれている。
幼稚園に娘を送り、主人と合流。事情を知る何人かのママにも少し会えたけど、そんなに会話は交わさなかった。今日は長女の日、そう決めていたから。
席はステージ前のど真ん中を取れた。主人に感謝。続々と埋まる保護者席に緊張が高まる。プログラムでは長女の劇は中盤だった。そして、一番最初の演目が次女のクラスだった。
幕が開く。可愛らしい衣装を身にまとった園児たちが元気な音楽に合わせて目いっぱいに踊る。でも、私はまともに直視できない。胸が詰まって、しゃくりあげるのを必死で我慢するためにステージの足元を凝視していた。
本当ならあの場所に、次女も立っていたはずなのに。
そう思わずにはいられなかった。ふと見れば、普段は気丈な主人も隣で静かに泣いていた。
大丈夫。長女の演目まではまだ時間がある。それまでにはちゃんと気持ちを戻せる。そう自分に言い聞かせて、次女のクラスが終わった後はしっかり他の演目も楽しめた。もちろん、長女の劇も。
本当に成長した。6歳になった長女は、去年よりもずっとハキハキと饒舌にセリフを喋っていた。衣装も誰よりも似合っていたし、とてもとても可愛かった。お遊戯会を直接観に来ることができて本当によかったと、心から思った。
お遊戯会が終わり、お昼を食べてから主人は病院へと向かった。私は長女と自転車で出かけるとお菓子やシールを買い、家に帰ってからもたくさん遊んだ。
夕方、ご飯の買い物。今日主人は面会ギリギリの20時まで次女のそばにいる予定なので、ごはんの量は実質2人分。長女が唐揚げを希望したので、明日の分も含めて大量に揚げようと鶏肉を購入した。次女も大好きな唐揚げだ。明日からはまた、私は次女の元で24時間を過ごすつもりだった。
長女と2人で囲むテーブルはどことなく寂しかった。けれどそれ以上に次女は寂しい思いをしている。今晩も、次女は20時に主人が帰った後からは朝までひとりきりで過ごさなければならない。そのうち、主人からメッセージが来た。
【寝るときに誰も居ないのが嫌だって言うから『19時半から寝る準備して20時に寝よう、それでたくさん寝て起きたら明日はママがくるから』って言ったら頑張るって。トントンしたら寝たよ。今から帰るね】
他にもママの作るご飯が食べたいと言ってくれたり、早く帰りたいから涙やめる、と頑張ってくれたり、次女はこの短期間にも強く成長を遂げていた。それから主人の話によると、次女は迷路が得意だという。新たな発見。
私も頑張らなければ。そう気持ちを強く持ち、この日は帰ってきた主人と共に長女と眠りについた。
12月15日 月曜日
「え、どうしてですか?」
「いま付き添い入院できる部屋が空いてなくて。申し訳ないのですが今夜も預かりでの入院になります。明日になれば、部屋も空くかもしれません」
朝イチで病院に着いてからの衝撃の事実を受け止めながら、私は次女の待つ病室に向かう。朝ごはんを前にひとりで俯く次女の名前を呼べば、振り向いた顔には一瞬で涙が滲んでいた。
「さみしかった」
ごめんね、と抱きしめた。そして1日遊ぶ間で、次女は最初に泣いたそれきり涙は見せなかった。
「あのね、ばあばがね、ぴょんぴょんガエルをあと10個作ったらお家に帰れるって。昨日作ったんだよ」
「そうなんだ。そしたら今日、2つ目作ろっか」
「うん」
「あとこれね、お守り。ぎゅって握って、早く良くなるようにってたくさん神様にお願いしてきたからね」
折り紙でぴょんぴょんガエルを作りながら、私は青いお守り袋を次女に手渡す。
「トカゲだ!」
「すみっこ好きでしょ?」
次女が笑顔になる。たまらなく可愛い。昨日、家にいる間にフェルトで作った簡易的なものだったけれど、作ってよかった。
「今日は? 今日は夜ママいる?」
「うーん。どうだろう。先生に聞いてみるね」
本当はもう付き添えないことは決まっていたけど、今日1日を楽しく過ごしてもらいたくて濁してしまった。そうして、もうすでに頑張りすぎるほどに頑張っている次女を5日ぶりにお風呂に入れて、遊んで遊んで、夜が来て。
「ママ帰るんでしょ。でも泣かない。頑張る」
次女には、明日はパパと2人で来るからねと伝える。この日も19時半にトントンすると、20時前には寝息を立てた。
主人に連絡して迎えを頼む。明日こそ、付き添いの許可が降りることを願った。
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