もしかして

部活動が休みのある日、後輩の女子4人組と帰宅する時間が一緒になったことがあった。

僕は彼女たちと少し離れた前を一人で歩いていた。


すると、通学用の自転車に乗った彼女が後ろから僕に追いつき、他の3人が僕に話があると呼び止めた。

それを告げた本人は自転車でそのまま走り去って行く。


僕は後ろにいた女子たちと合流し、話を聞くと、今から3人で先に行った彼女の家に遊びに行くので、僕も来ないかという誘いであった。

彼女が自転車で先に帰ったのは、来客の準備をするためだったらしい。


僕は誘われたこと自体が非常にうれしかったのだが、女子4人の中に僕一人だけ混ざれるほど女子を相手にすることに慣れていなかった。

ましてや、気になっている彼女の自宅へ行くなど、想像しただけで鼓動が激しくなってしまう。


僕はできるだけ平静を装い、なぜ僕を誘ったのかと質問してみた。

すると、3人が言うには、どうやらそれは彼女の提案だったそうなのである。


そんな優しい声がけに、もしかして、好意を持ってくれてるのではという淡い期待が胸をよぎった。


しかし、女子との会話に慣れていなかった僕は、一歩踏み出す勇気がなかった。

本当は行きたいという気持ちとは裏腹に、僕はその誘いを断った。


それでも3人は食い下がり、一緒に行こうと僕を誘ってくれる。

気持ちは揺らいだものの、勇気がないというよりも自分に自信がなかったので、きっぱりと行かないと少し強めに断った。

さらには、照れ隠しの気持ちがあったせいか、なぜ僕が行かないといけないのかという余計な一言まで発してしまった。

それを聞いてようやく3人はあきらめてくれた。


3人には、彼女の家に行くのを嫌がる僕が、どんな人間に見えていただろうか。

そして、そのやり取りを知った彼女は、果たしてどう思ったのだろうか。


翌日の部活で彼女に謝ったが、気にもしていない様子で、いつも通りの笑顔を見せてくれた。

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