ジングルベルの流れる頃に

久良紀緒

彼女との出会い

街中にクリスマスソングがあふれるこの季節になると、心の中にほろ苦い思い出がよみがえる。


それは、僕が高校生の時のお話。


地元の公立高校に入学した僕は、1年生の時に知り合った友人3人と理科部という部活に所属していた。

理科部は、理科実験室が部室兼活動場所となっていて、放課後に部員が集まって活動していた。


一応、理科にまつわることなら何をやってもOKということだったのだが・・・

夜中に天体観測と称しては墓地にある展望台付近でサバイバルゲームをやったり、写真の現像ができる暗室があったりと、実際の活動がよく分からない部活であった。

理科にまつわる実験などもついぞしたことはなく、放課後に部室に集まっては、部員同士でただしゃべっているだけのゆるい部活。


そんな部活だったので、部員数もそれほど多くなく、2年生は1人しか所属していなかった。

部員不足のせいで、3年生が引退する時には、僕は副部長を押し付けられてしまった。

新しい部長と僕は、普段から遊ぶ仲で、よく一緒に行動していた。


2年生に進級してすぐのころ、新入生に向けて入部説明会が開催された。

僕は部長とともに、体育館の壇上に上がって部活の説明を行った。

部長とのいつものやり取りの延長線上のような説明だったが、どうやらそれが掛け合い漫才のように見えたらしく、時折笑い声が漏れていたので新入生達には受けが良かったのだと思う。


その説明会のおかげか、新しく1年生の女子が4人が入部してくれた。

その子たちのためにもう少し理科部らしい活動しようと始めたのがバードウォッチングであった。


部費でフィールドスコープを購入し、定期的にバードウォッチングを開催するようになった。

初回こそ物珍しさから部員全員が参加したのだが、回を重ねるにしたがって参加する人数が減っていった。

半年ぐらい経過した時には、部員の半数以上が離脱していた。


1年生の女子部員のためにと始めた活動であったが、彼女らも大半が離脱していた。

それでも、一人だけ参加率が高い1年生の女子がいた。

僕は毎回参加していたのだが、彼女も常にいた。

彼女は女子部員の中でもみんなから慕われていて、気さくでいつも輪の中心にいるような子だった。


彼女が毎回参加していたのは、バードウォッチングのことが好きだったのだろうと思う。

野鳥を見つけるのが得意だった僕は、見つけた野鳥を彼女に教えると、喜んでくれて、興味深そうに観察していた。


そんな彼女との何気ないやり取りが繰り返され、、僕はいつしか好意を抱くようになっていた。


しかし、生まれてこのかた、女子と交際したことがない僕には、そのことを告げる勇気はなかった。

僕から告白されると、彼女にとっては迷惑かもと考えると、本当の気持ちを表に出せなかった。

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