夏音に混ざって
モンキーパンツ
第1話
今日は年に1度の夏祭り。
人間と妖怪が入り混じる日。
トンデン♪トンデン♪トンデン♪
射的屋の姉ちゃんと河童の小僧達がサッカーしてりゃあ。
河童の水掻きに当たったらハンドになるのか言い合いになってが、そんなのどうでもええ。
リンリン♪リンリン♪リンリン♪
町内会長のオヤジがスケベな目をして座敷わらしのおんなん子とシャボン玉して遊んでりゃあ。
座敷わらしのイタズラでオヤジの秘密の写真が特大花火と一緒に打ち上がるって知らずになぁ。
シャンシャン♪シャンシャン♪
町1番のイケメン大学生がろくろ首とお岩さんに口説かれて困ってりゃあ。
女達に見つからんようにお面被って隠れてたんけどイケメンがイケメン俳優のお面被りゃあ、すぐバレるに決まってらぁ。
ピーピーヒャラ♪ピーピーヒャラ♪
海坊主と中華屋のオババが光るチョコパプリカ作ってりゃあ。
なんだか気味わりぃけどちっとしかねぇ小遣いで、2つ買わせてくれぇ。
なんてたって今日は…
ドンドコ♪ドンドコ♪ドンドコ♪
大好きなあの子と
デートだがらさ!
ダメ元で誘ってみりゃあ、来てくれたぁ。
こんまま、チョコパプリカ食べながら祭りを抜け出て花火の見える丘に行ごう。
「へー、こんな丘があるなんて知らなかった!静かで良い所だね!
わ!町全体を見渡せるんだね!」
静かになって気づいたけんど、心臓がはち切れそうなほどうるせぇど。
「…あんのー、どして一緒に来てくれただ?」
「どうしてって?あなたが誘ってくれたからでしょ?」
「いや、そういうことでなくて祭りと言っても悪い妖怪も悪い人間もいりゃあ。知らない奴に誘われてノコノコ来ちゃあ、あぶねえべ?拐われて、神隠しにでもあったら大変だべ?」
「う~ん、大丈夫だよー!」
どしてか、自信満々にこたえとりゃあ。
「なんでそう思う?」
「それは、内緒かな?」
ヒエー!
素敵な笑顔やぁ。
こんな笑顔は、人間界にも妖怪の世界にもいやしねぇ。
…好きだぁ。
「…あんのぉ、言いてぇことがある」
「んー、なにー?」
「お、お、お、オラ、おめぇのことが…」
ドン♪
ドン♪
ドン♪
「ミズカキだ!!!」
しまっだぁーーー!!
間違えたぁーーー!!
ダイスキって言おうと思っだらミズカキって言ってまった!
「え?ミズカキ?」
「あ、え、えと。今日、射的の姉ちゃんと河童の小僧達がサッカーしてで!ミズカキがハンドなのかどうかで喧嘩してりゃあ!
お、おめぇは、どっちだと思う?」
オラは、何を聞いてるんや…
「うーーーーん、どっちでもいいけど。ミズカキも手の一部の気がするからハンドでいいんじゃない?」
「な、なるほど!おめぇ!頭も良いんだな!」
「…あ、ありがとう。それより君さぁ。そろそろ、その海外のイケメン俳優のお面外したら?」
ありゃー!やっぱダメかー。
イケメン大学生が付けてたお面と同じ露店で買ったんだけどやっぱり外さなきゃいけねぇみてぇだな。
ほんとは、醜い顔を見せたくねぇから外したくなかったけど仕方ねぇべ。
これで、オラの恋はもう終わりだ。
オラにしては、よくやったほうだぁ…
ゆっくりとお面を外してみた。
ガッカリされるのと思ってた。
でも、彼女はべっぴんな笑顔で見てりゃあ。
「オラの1つしかねぇ、どでけぇ目ん玉見ても何とも思わねえのか?」
「うん、だって1度会ったことあるもんね」
「…覚えてくれてたのかぁ?」
「うん、当たり前じゃん。
だって、私が小さい頃夏祭りで迷子になって神隠しにあいそうになった時君が現れて、ずっと手を繋いで歩いてくれてたもんね?」
「お、お、オラ…」
だめだ、どでけぇ目から涙が止まらねぇ…
オラの目ん玉じゃ、嫌われるとずっと思ってた。
ほんとは、あれから。毎年、夏祭りで遊ぼうって誘おうと思ってた。
でも、オラにはずっと自信が無かった。
よかった、今日誘ってみて。
「オラ!おめぇのことが!!
好きで好きでたまらねぇ!!」
ドン♪ドン♪ドン♪ドン♪
満開の特大花火が夜空に打ち上げる。
人間達と妖怪達が一斉に歌って踊ってりゃあ。
シャンシャン♪シャンシャン♪
射的の姉ちゃんも河童の小僧もサッカーをやめて歌って踊ってりゃあ♪
トンデン♪トンデン♪トンデン♪
ろくろ首もお岩さんもイケメンも仲良く歌って踊ってりゃあ♪
リンリン♪リンリン♪リンリン♪
海坊主も中華屋のオババもチョコまみれになって歌って踊ってりゃあ♪
ドンドコ♪ドンドコ♪ドンドコ♪
座敷わらしのおんなん子も大笑いして歌って踊ってりゃあ♪
ピーピーヒャラ♪ピーピーヒャラ♪
町内会長のオヤジは、神隠ししてる写真が花火とともにばら蒔かれて喚き散らしてりゃあ♪
ドン♪ドン♪ドン♪ドン♪
今日は年に1度の夏祭り。
人間と妖怪が入り混じる日。
また来年もおめぇと光るチョコパプリカ食べてぇ。
夏音に混ざって モンキーパンツ @monkeypants
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