第3話
「おや?“変人”のことを言っているのか?」
冷斌(レン・ビン)の言葉に、王浑江(ワン・フンジャン)は興味を示した。
「そうだ!間違いない!」
「あの関野(カン・イエ)のことだ!爬虫類を飼うのが好きなあの変人だ!」
冷斌の口調は冷たく、陰湿だった。
誰かに危険を押し付けるとなれば、冷斌はその男に押し付けたいと思った。
侯明(ホウ・ミン)は長年の同僚であり、信頼できる存在だ。
一方の関野は、ほとんど知らない相手だ。犠牲にするなら友人ではなく、嫌いな奴の方がいい。
「へぇ……」
「関野ね……あの子は特に問題があるわけじゃない。ただ、大きなメガネをかけて、部屋にこもって気持ち悪いものを飼ってるだけだ!」
「お前が彼に行かせたい理由、もしかして何か確執でもあるんじゃないか?」
王浑江が冷斌をからかうように見つめると、冷斌は眉をわずかに動かし、目を細めた。
実のところ……
冷斌の新婚の妻が、しょっちゅうあの「ペットショップ」に出入りしていた。
狼クモやトカゲ、ヤモリなどを見に行くという名目で、関野と笑顔で話すその様子に、冷斌の自尊心は強く刺激されていた。
そして、冷斌は仕事で家を空けることが多く、妻がそこに通うたびに、不快感が募った。
噂話も流れ始め、冷斌はますます関野を嫌うようになっていった。
普段なら、小さな不満で済む話だったかもしれない。
だが、法がなくなり、終末の時代が訪れると、冷斌の感情は歪み、ある種の悪意が芽生えた。
どうせ誰かを犠牲にするなら、自分が嫌いな奴がいい――そう考えるようになったのだ。
冷斌は薄く笑いながら言った。
「確執なんてないよ。ただ、現実的に考えただけさ。侯明を行かせても、役に立つ保証はない。だけど関野なら、確実に役に立つ。」
「ほう?具体的には?」
王浑江が肩をすくめると、冷斌は窓越しに関野の二階建ての建物を見つめた。
「簡単だ!」
「もし侯明を囮にしたら、十数メートル走る前に『大頭の怪異の赤ん坊』に首を貫かれるだろう。それで一人の犠牲で済むかどうかも分からないし、逆に怪異がこちらに来るリスクもある。」
「だけど!」
「俺たちは今13階にいるんだ。ここから関野の家の窓ガラスに物を投げればどうだろう?」
「音に反応して、多くの怪異があいつの『怪物の巣』に集まるはずだ。」
「そうすれば、怪異が彼の家で死体をむさぼる時間を稼げるし、侯明を犠牲にするより遥かに効果的だ。」
「ふむ……面白い。」
冷斌の提案に、王浑江の目が輝いた。確かに!
ここにいる誰かを囮にするより、外にいる関野を利用する方が遥かに安全だ。
しかも、高層から物を投げるだけでいいのだから、リスクはないに等しい。
「さすがエリートだな……だが、もし関野が餓死したら、その計画はどうなる?」
王浑江が笑うと、冷斌は首を横に振った。
「人の生存本能を甘く見てはいけませんよ。彼は生き延びるために、あの爬虫類を焼いてでも食べるでしょう。」
「それに、彼が死んだとしても、その死体は十分に怪異の注意を引きつける役割を果たすはずです。」
「なるほど!」
王浑江は冷斌に感心し、家族に合図を送った。
「よし、やるぞ!」
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