女は、クックと笑った。

「ほら! やっぱり槙村君じゃない。久しぶりね」

 それには応えなかった。もう、彼女とは関わりたくないからだ。

「まさか、この街にいたとはね。びっくりしたわ」

 オレの方は“がっかり“したのだが、それは言わないことにした。


「オレの居場所を誰から聞いた?」

「そんな怖い顔しないでよ」

「それは元からだ」

「まあね」

 話を受け流す彼女に、オレは思わず舌打ちする。


「ここへは偶然よ、偶然。あたしもこの沿線に住んでいて、さっきたまたま改札であなたを見つけて……」

「誰から聞いたのかとオレは質問している」

「だから偶然だって」


 率直に言って、この女の、誰にでもこういう見え透いた嘘を平気でつくところが嫌いだ。

 多分、他人が馬鹿に見えているに違いない。

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