Ⅰ 再会

 秋口に入った街は、青い夕闇に包まれつつあった。

 オレは泊まりこみの仕事を終え、汗まみれで、すっかりくたびれきっていた。

 最寄り駅のホームで、重くだるい身体をまといながら電車が滑り来るのを待った。


 すぐそばで聞き覚えのある、鼻にかかった中年女の甘い声がした。

「槙村君!」

 オレはその方を見ないで、聞こえないふりをした。

「槙村君でしょ?」

 もう一度耳許で呼ばれる。

 さすがに対応せざるを得ない。


「人違いだ」

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