第4話 嗅覚の精霊フレグランス
ひかるは、森の中を歩いているときに不思議な香りに気づきました。それは、どこか懐かしく、心が温かくなるような香りです。
「この香り、なんだか知ってる気がする…。でも、どこで嗅いだんだろう?」
ひかるが立ち止まって考えていると、その香りが風に乗って近づいてきました。そして、ふわりと光る存在が現れました。
「こんにちは、ひかる。私は嗅覚の精霊フレグランス。香りは思い出を運んでくれる特別なものなんだよ。」
フレグランスは花びらのように柔らかい姿をしており、風が吹くたびにさまざまな香りをまとっています。
「ひかる、君が今感じている香りは、君の心の中にしまわれている大切な思い出に繋がっているんだよ。一緒にその思い出をたどってみよう。」
フレグランスが手を差し出すと、ひかるは少し戸惑いながらも、その手を取りました。
フレグランスがひかるを導いた先は、不思議な「思い出の庭」。その庭にはいろいろな花が咲いており、それぞれが特別な香りを放っています。
「ひかる、この庭に咲いている花は、君の心にある思い出の一つ一つなんだよ。」
ひかるは興味津々で花を眺めていました。ある花の香りを嗅いでみると、子供のころ家族と行ったお祭りのことを思い出しました。夜空に打ち上げられた花火の光景が目に浮かび、楽しかった気持ちが蘇ります。
「これ、僕のお祭りの思い出だ!」
フレグランスは微笑みました。「香りは、忘れていた思い出を呼び覚ます力があるんだ。そして、思い出をたどることで、自分がどんな気持ちを大切にしているのか気づけるんだよ。」
「でも、楽しい思い出ばかりじゃないよね…。悲しい思い出だってある…。」
ひかるが不安そうに言うと、フレグランスは優しく頷きました。「そうだね。でも、悲しい思い出にも意味があるんだ。それを手放すことで、新しい可能性の香りが感じられるようになるんだよ。」
フレグランスは、少し離れた場所に咲いている一輪の花を指差しました。その花は他の花よりも色がくすんで見えます。
「ひかる、あの花の香りを嗅いでみて。」
ひかるは恐る恐るその花に近づき、香りを嗅ぎました。すると、以前友達と喧嘩したときのことを思い出しました。そのときの寂しい気持ちや怒りが胸に蘇ります。
「これ、すごく嫌な気持ち…。なんでこんな思い出を思い出さなきゃいけないの?」
フレグランスはひかるの肩に手を置きました。「嫌な気持ちや悲しい思い出は、心の中にしまい込んでおくと、ずっと消えないままなんだ。でも、それを受け入れて手放すことで、心が軽くなるんだよ。」
「どうやって手放すの?」
フレグランスは花びらを一枚摘み取り、それを風に乗せました。「この花びらを、風に乗せて遠くへ飛ばしてごらん。『ありがとう』と言って、さよならするんだ。」
ひかるは少し迷いながらも、同じように花びらを摘み取りました。そして、深呼吸をしてから、心の中で『ありがとう』とつぶやきながら花びらを風に乗せました。
すると、不思議なことに、その花が明るく輝き始め、新しい色を取り戻しました。
「ひかる、今の花の香りを嗅いでごらん。」
ひかるは変わった花の香りを嗅ぎました。それは先ほどとは全く違う、爽やかで明るい香りでした。
「なんだか、元気が出る香りだ!これってどういうこと?」
フレグランスは微笑みました。「過去の感情を手放すことで、新しい気持ちや可能性を受け入れるスペースができたんだ。これからは、この香りが君を未来へ導いてくれるよ。」
ひかるはその香りを胸いっぱいに吸い込みました。そして、心の中が軽くなり、新しい冒険へのワクワクした気持ちで満たされていくのを感じました。
「フレグランス、ありがとう!僕、これからもっといろんな香りを感じていきたい!」
「その意気だよ、ひかる!香りはいつでも君のそばにあるからね。」
こうして、ひかるは嗅覚の精霊フレグランスとの冒険を終えました。次の精霊との出会いでは、どんな新しい力を手に入れるのでしょうか?
ひかるの旅は、まだまだ続きます!
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