第2話 視覚の精霊ヴィジョン

 ひかるは、視覚の精霊ヴィジョンと出会った後、不思議な感覚を覚えました。ヴィジョンの青い光が優しくひかるを包み込み、なんだか心が落ち着いてくるような気がしたのです。


 「ひかる、君には未来を見る力があるんだよ。でも、最近はその力がちょっと曇ってしまっているみたいだね。」ヴィジョンはそう言うと、ひかるの目をじっと見つめました。


 「未来を見る力?」ひかるは首をかしげました。「僕、そんなの持ってないよ。ただ、明日学校に行くとか、そういうことぐらいしか分からない。」


 ヴィジョンはにっこり笑いました。「未来を見るっていうのは、特別なことじゃないんだよ。たとえば、『大きくなったら何をしたいか』とか、『次のテストでどうなりたいか』とか。そんなふうに、未来の自分を想像する力のことなんだ。」


 ひかるは少し考えました。確かに、昔は「サッカー選手になりたい!」と思っていたことを思い出しました。でも最近は、何をしたいのか分からなくなっていたのです。


 「どうすれば、未来を見る力を取り戻せるの?」ひかるが尋ねると、ヴィジョンはひかるの手を取りました。


 「それなら、一緒に未来のビジョンを探しに行こう!」




 ヴィジョンに連れられて、ひかるは青い光に包まれながら新しい世界に足を踏み入れました。そこは「未来の森」と呼ばれる場所で、緑の木々の間から無数の光のかけらがキラキラと舞っていました。


 「ここは、みんなの未来が映し出される場所だよ。木々の間にある光は、それぞれの人が思い描く未来なんだ。」ヴィジョンが説明しました。


 ひかるは目を輝かせて、周りを見渡しました。「じゃあ、この光の中に僕の未来もあるの?」


 「もちろん。でも、君の未来の光は、今は少し弱まっているみたいだね。それを探して、もう一度輝かせるのが今日の冒険なんだよ。」


 ひかるは少し不安そうな顔をしました。「見つけられるかな…。なんだか難しそうだな。」


 「大丈夫!僕がついているからね。」ヴィジョンはそう言って、ひかるを励ましました。




 ひかるとヴィジョンは森の中を進みながら、いくつかの光を見て回りました。一つ目の光は、ひかるが大人になってサッカー選手になった姿を映し出していました。ひかるはその光をじっと見つめました。


 「昔、僕はサッカー選手になりたかったんだ。でも、最近はあまり楽しくなくて…。本当にこれが僕の未来なのかな?」


 ヴィジョンはうなずきながら言いました。「たしかに、昔の夢がそのまま未来になるとは限らない。でも、サッカーを通じて感じた『楽しい』とか『がんばりたい』という気持ちは、君の大切な未来のヒントになるはずだよ。」


 次に見つけた光は、ひかるが科学者になって実験をしている姿でした。「これもなんだか面白そうだけど…僕、本当にこんなことできるのかな?」


 ヴィジョンは微笑みながら言いました。「未来はね、今の自分の小さな興味や努力が集まって作られるものなんだよ。今すぐに答えを見つける必要はないんだ。」




 森を進むうちに、ひかるは少しずつ自分の未来について考えるようになりました。サッカーをしていた時の楽しい思い出、学校で友達と話していた時のワクワクする気持ち。それらがすべて、自分の未来に関係しているような気がしてきたのです。


 しばらくすると、ひかるの目の前に大きな青い光が現れました。それは、他の光とは少し違う特別な輝きを放っていました。


 「これが、君の未来のビジョンだよ。」ヴィジョンが言いました。


 ひかるはその光に手を伸ばしました。すると、光の中にいろいろな映像が浮かび上がりました。サッカーをしている自分、新しい友達と楽しく過ごしている自分、そして何かを一生懸命に勉強している自分…。


 「僕の未来、こんなふうになれるのかな?」


 ヴィジョンはうなずいて言いました。「未来はね、今の君が作るものなんだよ。このビジョンを見てどう思った?何かやりたいことが見えてきたかな?」


 ひかるは少し考えた後、「うん、僕、もう一度サッカーをがんばりたい。そして、もっとたくさんのことを知って、自分が本当にやりたいことを探したい!」と答えました。




 未来のビジョンを見つけたひかるは、なんだか心が軽くなった気がしました。「自分がどんなふうになりたいか、少し分かった気がする。ありがとう、ヴィジョン!」


 ヴィジョンは微笑みながら言いました。「未来は一つじゃないんだよ。たくさんの可能性があって、君が選んだ道がどんどん未来を作っていくんだ。これからも自分の未来を見つめる力を忘れないでね。」


 ひかるは大きくうなずきました。そして、次の冒険に向けて心の中で新しい目標を抱きながら歩き出しました。


 こうして、ひかるとヴィジョンの冒険は一つの区切りを迎えましたが、彼の心には新たな希望の光が灯ったのです。未来を信じる力を手に入れたひかるは、これからどんな冒険にも立ち向かえるようになっていくでしょう。


 次の冒険では、どんな精霊と出会い、どんな発見が待っているのでしょうか?ひかるの旅はまだ始まったばかりです!

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