こころのおそうじ大作戦!

まさか からだ

第1話 心の中にある引き出し

 人間の心には「大切な引き出し」があると言われていました。その引き出しは、楽しかった思い出やうれしい気持ち、悲しかったことや悔しかったことをしまっておく場所です。でも、長いあいだ引き出しを開けないでいると、どんどん中身がごちゃごちゃになってしまいます。まるで、おもちゃ箱の中で全部のおもちゃが絡まり合ってしまうみたいに。


 その引き出しがどうなっているかは、自分ではなかなか気づけません。特に、忙しい日々を過ごしていると、引き出しがいっぱいになりすぎて、どれが大事なものか分からなくなってしまうのです。


 そんな引き出しが、ひかるという少年の心の中にもありました。




 ひかるは、小学5年生の男の子。クラスではみんなと仲良くしていますが、最近、なぜか元気が出ません。好きなサッカーをしていても、前みたいに楽しく感じられないし、家に帰るとぐったりしてしまいます。


 ある日、お母さんが「どうしたの?元気ないみたいだけど」と声をかけてくれました。でも、ひかるは自分でも理由がわからなくて、「うーん、なんでもないよ」と言うだけでした。


 夜になると、ひかるは自分の部屋で考えました。


 「なんでこんなにモヤモヤするんだろう…。何かが引っかかってる気がする。でも、それが何かが分からない。」


 その晩、ひかるはいつの間にか寝てしまいました。でも、その夜、不思議な夢を見たのです。




 夢の中で、ひかるは広い草原に立っていました。風がそよそよと吹き、空は青く、どこまでも続いています。すると、目の前に一つの大きな木が現れました。その木の下には、8つの小さな光が集まっています。


 「ひかる!」

 誰かがひかるを呼びました。驚いて振り返ると、そこには人間の形をした不思議な存在が立っていました。それぞれが違う色のオーラをまとっています。


 「僕たちは、精霊だよ。ひかるの心の中にある引き出しを守るためにやってきたんだ。」


 ひかるはびっくりして言いました。「え?心の中に引き出し?どういうこと?」


 一番前にいた、青い光をまとった精霊が説明してくれました。「心の中には、いろんな感情や思い出をしまう引き出しがあるんだ。でも、その引き出しがぐちゃぐちゃになってしまうと、心が疲れちゃうんだよ。今のひかるみたいにね。」


 「じゃあ、どうすればいいの?」とひかるは聞きました。


 すると、黄色い光の精霊がにっこりして言いました。「簡単だよ!私たちが手伝ってあげるから、一緒に引き出しをお掃除しよう!」




 ひかるの周りにいた8人の精霊たちが、次々に自己紹介を始めました。


 ヴィジョン(視覚の精霊):青いオーラを持つヴィジョンは、未来を見通す力を持っています。「ひかるがどんなふうに生きていきたいか、一緒に考えるよ!」

 ナビゲーター(方向感覚の精霊):緑のオーラをまとったナビゲーターは、迷った時に正しい道を示してくれる存在です。「僕が迷子にならないように助けるね!」

 テイスト(味覚の精霊):オレンジ色のオーラを持つテイストは、過去の経験から学ぶ力を教えてくれる精霊。「昔のことを思い出して、どう役立てるか考えよう!」

 他にも、聴覚の精霊リスン、触覚の精霊タッチ、嗅覚の精霊フレグランス、直感の精霊インスピレーション、バランスの精霊エクイリブリウムが続けて自己紹介しました。それぞれが、ひかるの感覚やエネルギーをサポートする特別な力を持っています。




 精霊たちの話を聞いて、ひかるは少し元気が出てきました。「心の引き出しを掃除すれば、また元気になれるのかな?」


 「そうだよ!」とヴィジョンが答えました。「それに、引き出しを整理することで、ひかるの未来がもっと輝くようになるんだ!」


 ナビゲーターが地図を広げて言いました。「まずは、引き出しの中に何が入っているか、一緒に見てみよう!」


 こうして、ひかると精霊たちの心の引き出しをめぐる冒険が始まりました。ひかるは、自分の心の奥深くにある秘密や、忘れていた大切な思い出に向き合う旅に出ることになります。


 この冒険の先に、ひかるはどんな発見をするのでしょうか?それは、ひかるだけでなく、私たちの心にも通じる大切な物語です。

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