刑事総務課の羽田倫子は、安楽イス刑事でもある その二
久坂裕介
第一話
ぽかぽか
私は
私は思わずその場で、飛び上がった。だって、ハンバーグランチだよ!
おそらく日本の全国民が大好きな、あのハンバーグランチだよ! そりゃあ、テンション
だがその時、私は気付いた。しまった、ハンバーグランチのことを考えてテンションが爆上がりして、刑事総務課の仕事が手につかない! 警視庁の職員は地方公務員だから、これじゃあ
私は思わず、胸の前で両手を組んだ。ゴメンナサイ、都民の
そうして私が都民の皆様から、お
はあー……。天才だな、新藤刑事は。私のテンションを一気に下げる、天才だな……。はっきり言って、いつもの場所には行きたくない。どうせ何かの事件を、
だが、行くしかなかった。なぜなら新藤刑事は、私の弱みを
私は、地方公務員だ。公務員の
「ちょっと
鑑識課の
由真さんは上下、青いツナギのような鑑識の制服を着て今日も、ショートカットの髪型が似合っている。そして新藤刑事は相変わらず、ムダにイケメンだった。軽くパーマがかかっている髪と、
それに、私だって
ところでなぜここに由真さんがいるのかと言うと、ちゃんと理由がある。私と新藤刑事が二人きりでコソコソと話をすると、
私は、聞いてみた。
「今回は、どんな事件が解決できないんですか?」
すると新藤刑事は、低くよく通る声で答えた。
「いや。今日はお前に、試験を受けてもらう」
私は、何が何だか、分からなかった。は? 試験を受けろって何、言ってんだコイツ? とうとう頭のネジが、ぶっ飛んだか。なので私は残念な人を見つめる目で、新藤刑事を見つめた。すると新藤刑事は、
「何、残念な人を見る目で見てるんだ!
は? 国税査察官? やっぱり、何を言っているのか分からない。なので私は、アドバイスをしてあげた。
「あー、仕事で
それを聞いた新藤刑事は、私を
「あ? 何だと、お前?」
すると優しい由真さんが、私をなだめた。
「ちょっと、それは
由真さんがそう言ったので、新藤刑事の怒りは少し
「俺の大学の時からの友達に、国税査察官をしている
私には、やはり何が何だか分からなかった。
「は? 何、言ってるんですか、新藤刑事。やっぱり病院に行って……」
すると新藤刑事は、キレた。
「いいから、
お? キレたぞ? 逆ギレか? キレたいのは訳の分からない話を聞いている、私の方なんですけど? するとやはり由真さんが、なだめた。
「まあまあ、倫子ちゃん。新藤さんの話を最後まで、聞いてあげて~」
いつもお世話になっている由真さんにそう言われると、私も大人にならなければならない。しょうがない、聞いてやろう。だから話せ、今すぐ話せ。すると新藤刑事は、説明を始めた。
中越たち国税査察官は、ある男を調べていた。最近、最も
中越たちは、
「分かるかお前、脱税が?」
私は、イラっとした。
「だからアンタが、お前って呼ぶなー!」
だが新藤刑事は、
「そんなことは、どうでもいい。脱税を知っているかと、聞いているんだ」
仕方が無いので、私は答えた。
「当然じゃないですか! 私を誰だと思っているんですか?! 全く……。脱税っていうのは、収める義務がある税金の額をごまかして、納税額を少なくすることでしょう?!」
「ああ、その通りだ。そして脱税は、犯罪だ」
「そんなことも知ってます!」
すると新藤刑事は、説明を続けた。だから中越たち国税査察官は、考えた。豊島は自分の
だから中越たちは、豊島が住んでいる高級マンションに収入の一部を隠しているんじゃないかと、家宅捜索をしたと。そこまで聞いて、私は疑問に思った。
「うーん。それはちょっと、おかしいですね」
すると新藤刑事は、聞いてきた。
「何がだ?」
「収入の一部を隠すとなると、普通は
それを聞いた新藤刑事は、答えた。
「ああ。それくらい中越たち国税査察官も、分かっている。だが調べた結果、豊島はそんなモノは借りていなかった。そして持ち家ではなく、高級マンションに住んでいる」
「なるほど。では、宝石や
「ああ。当然、それも調べた。だが、そんなモノも見つからなかったそうだ」
「うーん、なるほど……」
そして私は、新藤刑事から聞くことになった。中越たち国税査察官が家宅捜索した時の、
●
中越たち国税査察官が豊島のマンションに家宅捜索したのは、土曜日の昼だった。豊島には、妻と小学生の息子がいた。もしかすると収入の一部を隠しているのは、妻や息子かも知れない。だから家族が全員そろうだろう、休日の土曜日の昼にした。
そうして中越たちは、それこそマンションをくまなく探した。
そこで中越たちは、妻に目を付けた。中越は、妻に聞いた。
「お料理中ですか。ちなみにお昼のメニューは、何ですか?」
妻は、無表情で答えた。
「カレーライスですが。
「ああ、そうですか」
そして次に、息子に目を付けた。息子はリビングのテーブルで、豊島とカードゲームをしているようだった。中越は、息子に聞いてみた。
「パパと遊んでいるのかい、
すると息子は、笑顔で答えた。
「うん! パパと『ビッグ・モンスター』のカードゲームで、遊んでるんだ!」
「そうか。どっちが勝ったんだい?」
「僕だよ! パパが持っているカードは
それを聞いた豊島は、
「ああ、そうだね。パパは弱いね」
中越が見てみると、豊島と息子の
●
そこまで聞いた私は、
「うーん、なるほど……」
すると新藤刑事は、聞いてきた。
「どうだ? 現金や
この部屋には、事務用のグレーの机とパイプイスがある。私はパイプイスに
「まあ、ありそうですね」
それを聞いた新藤刑事は、
「な、何? ど、どこにあるんだ?!」
やれやれ。新藤刑事は口が軽く、いつも根も葉もないウワサ話をしているが事件を解決するためには必死になる。そこだけは、
「それを新藤刑事に教えて、私に何のメリットがあるんですか?」
すると新藤刑事は、ニヤリと笑った。
「うむ。
その言葉に私は、
「ほ、報酬ですか?! 一体、どんな?!」
「捜査第一課に、
な、あの美人で有名な矢沢刑事に恋人が?! 一体、どんな人なんだろう? うーむ。これは、警視庁が舞台の推理小説のネタになるな。そう思った私は、確認した。
「今度こそ、ガセネタじゃないでしょうね?」
「ああ」
「分かりました。それなら、教えましょう」
「ああ、聞かせてくれ」
私は、答えた。
「豊島が持っているカードゲームのカードを
すると新藤刑事は、
「は? カードゲームのカード? それが一体、何なんだ?」
私は、イラっとした。
「教えてくれって言うから、教えたんじゃないですか! いいからさっさと、調べてください!」
「わ、分かった、分かった。
と新藤刑事は、部屋から出て行った。すると由真さんが、聞いてきた。
「ねえ、倫子ちゃん。それって、どういうことなの?」
私は、答えた。
「世の中には価値がある、レアカードがあるって言うことですよ。それじゃあ」と私も、部屋を出て行った。
●
昼休み。あー、ハンバーグランチ、美味しかったー。
そしてランチで満足した私は刑事総務課の自分の席で、まったりとしていた。すると推理小説のアイディアが浮かんだので、私はスマホにメモをした。
私が今、書いている推理小説は何と、異世界を舞台にした推理小説だ。私の担当編集者は、言った。私が書く推理小説は、確かに面白い。推理小説マニアには、ウケる。だが推理小説マニアは、少ない。つまり、あまり売れない。
だから今、流行っている異世界を舞台にした推理小説を書いて欲しいと、言ってきた。私は最初、それは無理だと思った。でもやっぱり、書くことにした。担当編集者から依頼された仕事は、確実にやる。それがプロだ!
そうしているとスマホに、メッセージが表示された。『新藤だ 報酬をやるから
ほ、報酬! 私は報酬に
「これは、中越から特別に借りてきたものだ。中越が豊島から押収したカードゲームのカードを調べてみると何と、一千万円の価値があるカードが五枚あった。つまり、五千万円だ。豊島は五千万でカードゲームのカードを買って、
私は、聞いてみた。
「それを説明したら、報酬をくれますか?」
「ああ」
「分かりました。それでは説明します」
と私は、説明を始めた。普通カードゲームのカードは十枚入りで一パック、五百円くらいで買えます。つまりカードの一枚の値段は、五十円くらいです。でも世の中には、レアカードというものが
新藤刑事は、
「なるほど。でもどうして豊島が持っているのが、レアカードだと分かった?」
「それは、豊島の息子が話したことで分かりました」
「豊島の息子? 何て話したっけ?」
「豊島の息子は、言いました。『パパが持っているカードは珍しいんだけど、弱いんだ!』と。これは特別なイベントでしか手に入らない枚数が少ないカードの、
「なるほど、そういうことか」
新藤刑事が納得したようなので、私は
「それじゃあ、報酬をくださいよ! 捜査第一課で一番、美人だと言われる矢沢刑事の恋人は誰ですか?! それは警視庁を舞台にした推理小説を書く、参考になります!」
すると新藤刑事は、あっさりと答えた。
「そんなことは、知らん。矢沢刑事に恋人いるというのは、あくまでウワサだからな」
「へ?……」
私は、キレた。
「それじゃあ今回も、ガセネタじゃあないですか?!」
「まあまあ。美人刑事だったら
私は、何も答えられなかった。それも
「それじゃあ、このカードは中越に
それを聞いて、私の怒りは
「うるさーい! あと私のことを、お前って呼ぶなー!」
そして私は、落ち込んだ。またしても報酬に目が
「さ、この美味しいコーヒーでも飲んで~。今回も、お疲れ様~」
由真さんが
「それにしても、あんな小さなカードが一枚、一千万円もするなんてね~。驚きだわ~」
なので私は、言った。
「いやいや、由真さん。世の中には、もっと価値があるレアカードもありますよ」
「え? えーと、それじゃあ一枚、五千万円くらい?」
私は、首を横に
「ま、まさか一枚、一億円くらい?!」
私は再び、首を横に振った。そして、答えた。
「私の
「え? な、七億円?!」
由真さんが淹れてくれた美味しいコーヒーを飲み
「由真さん。美味しいコーヒーを、ありがとうございました」とお礼を言って。だが由真さんは、まだ驚いていた。
「な、七億円……。あ、あんな小さなカードが七億円……」と呟いて。
部屋を出た私は、考えた。今回も、新藤刑事に騙された。こうなったら
こうして無事に事件は解決したが、刑事総務課の自分の席で私はため息をついた。どうして豊島は、脱税なんかしたんだろう。脱税も、立派な犯罪だ。犯罪なんか起こしたら警察に捕まってメディアに
刑事総務課の羽田倫子は、安楽イス刑事でもある その二 久坂裕介 @cbrate
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