第2話 マウント


その日から毎日のように邦明が俺に絡んできた。


「なぁ俺に陽子を取られてどんな思いだ? 聞かせてくれよ」


そう俺に言ってくる。


構わないで欲しい。


長年付き合って来たんだ。


俺が辛くないわけないだろう。


「正直辛いな……それじゃぁな」


そう言うと厭らしい笑顔で邦明は去っていく。


「やっぱり、私、邦明にして良かったわ。イケメンだし優しいしもう最高、親友に恋人を奪われたってどんな気持ち? 私を大切にしてくれない純也が悪いのよ」


邦明と付き合って舞い上がっていたのかよくマウントを取るようになってきた。


こんな性格だったのかとかなり幻滅した。


こんな性格なら結婚しても破局しただろうし、これで良かったんだ。


そう思い込むようにした。


周りの同僚も上司も俺を気遣ってくれる。


良く飲みに誘ってくれて愚痴につき合ってくれている。


地味に辛いのが陽子の母親に謝られたことだ。


「おばさんね、てっきり純也くんがうちの子と結婚すると思っていたのよ……なんだかごめんね」


そりゃそうだ、小学生からの付き合いで良く飯も食わせて貰っていた。


おじさんと魚釣りに行った事もある。


だが、そんな周りをよそに二人の俺へのマウントは続いていく。



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