第8話「天空の都エリュシオンと重なる願い」

天空への招待


「翔太さん、今回の配達先は『天空の都エリュシオン』です!」


ミーリスが見せた地図には、雲の上に浮かぶ美しい都市が描かれていた。配達品は「星の涙」と呼ばれる小さなガラス瓶に入った液体だった。


「これ、空の上まで届けろって?」翔太はため息をつきながらミーリスを見た。

「もちろん!でも安心してください。天空への道は『浮遊の翼』という飛行魔法の道具で移動できますよ!」


翔太は不安げに道具を身に着け、雲間に浮かぶ輝く都へと向かう。


エリュシオンへの到着


翔太たちがたどり着いたエリュシオンは、金色の光に包まれた幻想的な都市だった。住民たちは空に生きる民らしく、羽根のような装飾を身にまとい、地上の人間にはない洗練された雰囲気を醸し出していた。


しかし、街の一部はどこか寂れた様子で、住民たちの顔には不安が浮かんでいる。翔太は届け先を探しながら、街の現状に疑問を抱いていた。


「一体、この街で何が起きてるんだ?」


案内役の青年カイルが静かに答える。

「実は、この街を支える『天の柱』が崩れかけているんです。それを修復するために『星の涙』が必要なのですが……。」


星の涙と消えた守護者


「星の涙を届ければ解決するんじゃないのか?」翔太の問いに、カイルは首を振る。

「修復の儀式には、エリュシオンの守護者『白翼のセリア』が必要です。しかし、セリア様は天の柱が崩れ始めた頃から行方不明なのです。」


翔太はカイルの話を聞き、荷物を届けるだけでは解決しないことを悟る。

「結局、荷物を届けるだけじゃ済まないのか……でもやるしかないな。」


ミーリスが提案する。

「セリア様がどこにいるかを探しつつ、天の柱に向かいましょう!何か手がかりが見つかるかもしれません!」


天の柱での戦い


翔太たちが天の柱に到着すると、そこには巨大なひび割れが広がり、柱を守るはずの機械兵たちが暴走していた。


「うわ、これヤバいやつだ!」翔太は叫びながらもカートを守りつつ柱へ向かう。


ミーリスの魔法とカイルの弓術で機械兵をなんとか退けたが、柱に近づくと異変が起きた。柱の内部からセリアが現れるが、彼女の目は冷たく、何かに操られているようだった。


「星の涙を届けに来たか……だが、この柱はもう終わりだ!」


セリアとの対話


翔太はセリアに向き合い、必死に語りかける。

「俺はただ、届けるべきものを届けに来たんだ!この星の涙が必要なら、それを使って街を救うべきだろ!」


セリアの目が一瞬揺らぐが、謎の力により再び攻撃を仕掛けてくる。


「翔太さん、星の涙を柱に捧げてください!」ミーリスが叫ぶ。


翔太は迷わず柱の祭壇に星の涙を置く。すると、柱が輝き始め、セリアを操っていた力が解かれる。


「……私は、一体何を……?」セリアが目を覚まし、翔太たちを見て涙を流した。


天空の都の再生


星の涙の力で天の柱は修復され、エリュシオンに再び活気が戻った。住民たちは翔太に感謝の意を伝え、セリアも深々と頭を下げた。


「あなたのおかげで、この都は救われました。本当にありがとう。」


翔太は照れくさそうに頭をかきながら言った。

「俺はただ、荷物を届けただけだからさ。」


次の依頼へ


ギルドに戻ると、新たな依頼書が翔太を待っていた。

「今度は……『冥界の門』?またやばそうなところだな……。」


ミーリスが笑いながら言う。

「でも翔太さんなら、どんな場所でもきっと届けられます!」


翔太の配達の旅は、まだまだ続く――。

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