第7話「海底都市アクアリスと忘れられた歌」

新たな挑戦、海底へ


「次の配達先は『海底都市アクアリス』です!届け物はこちら、『生命の貝殻』!」


ミーリスから手渡された小さな貝殻は、淡い青い光を放っていた。


「海の中に配達なんて……無理だろ!俺は人間だぞ!」翔太は頭を抱えたが、ミーリスは笑顔で説明する。

「ご安心を!『アクアスフィア』という魔法装置が翔太さんを水中で守ります。空気のバリアを作るので息もできますよ!」


翔太は渋々装置を装着し、アクアリスへの入り口である湖に向かうことにした。


海底都市アクアリス


湖に飛び込んだ翔太とミーリスは、魔法装置の力で息苦しさを感じることなく水中を進んでいた。周囲には光を放つ珊瑚や、泳ぐ巨大な魚の群れが広がり、幻想的な景色が続いている。


やがて、巨大なドーム状の都市が現れた。透明な壁に覆われたその内部には、海の民が暮らす町並みが広がっていた。


「すごい……本当にこんな場所があるなんて。」翔太は感動しながらも、指定された届け先を探し始める。


しかし、住民たちの表情はどこか暗く、活気が感じられなかった。


生命の貝殻の意味


翔太は案内役の海の民エイリスから話を聞いた。

「この都市は今、滅びの危機に瀕しています。大地の深部に眠る『忘れられた歌』が失われてしまったのです。それが都市の生命エネルギーを支えていたのですが……。」


「それでこの貝殻が必要ってことか?」翔太が尋ねると、エイリスはうなずいた。

「生命の貝殻は、忘れられた歌を再び呼び覚ます鍵となるのです。」


しかし、その歌が封印されている場所は、海底でも特に危険な「渦の迷宮」の中にあった。


渦の迷宮への挑戦


翔太とミーリス、そしてエイリスは渦の迷宮へと向かった。そこは強力な水流が渦巻き、視界も悪く、どこに何があるのか分からない混沌とした場所だった。


「こんなところで荷物守れってか……無理ゲーすぎる。」翔太はぼやきながらも、カートをしっかりと押して進む。


途中、巨大な水中生物が襲いかかってきたが、エイリスが持つ水魔法とミーリスの防御魔法でなんとか切り抜ける。


迷宮の最深部にたどり着くと、そこには巨大な石碑と閉ざされた扉があった。


歌を取り戻す鍵


石碑には古代文字で「生命の響き、永遠の調べを捧げよ」と刻まれていた。エイリスは生命の貝殻を取り出し、それを祭壇に置くと、柔らかな光が周囲を包み始めた。


だが、突然扉が開き、中から暗黒の水流が吹き出してきた。その中から現れたのは、封印を守る「海の守護者」だった。


「この歌を持ち帰る資格があるか、試させてもらう!」


翔太はその圧倒的な力に一瞬怯むが、決意を胸に前へ進む。

「資格があるかどうかなんて関係ない!届けるべきものを届ける、それが俺の仕事だ!」


守護者との激しい戦いが繰り広げられたが、エイリスの魔法と翔太の必死の行動でついに守護者を説得することに成功する。


忘れられた歌の復活


扉の奥には、美しい音色を奏でる水晶のオルゴールがあった。エイリスがその音色を響かせると、海底都市全体にその調べが広がり、まるで命が宿るように光が満ちていった。


「これが忘れられた歌……!」


都市の住民たちも再び活気を取り戻し、翔太たちに深く感謝した。


次の旅へ


ギルドに戻った翔太は、次の依頼書を手に取る。

「今度は『天空の都エリュシオン』だってさ。配達員って地上だけじゃ済まないんだな……」


ミーリスが笑いながら言った。

「どこでも届ける。それが翔太さんの信念ですもんね!」


新たな冒険の幕が、再び上がる――。


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