助け

 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ───ッ!?


「ガァァァアアアアアアアアアっ!」


「きゅーっ!?」

 

 後ろから、獣の声が聞こえてくる中で、僕は恐怖で頭をいっぱいいっぱいにさせながら、全力で逃げ続ける。


「……きゅっ」


 嫌だ。嫌だ、嫌だ……死にたくないっ。

 思い出される。

 反復される。

 トラックにはねられたときのことを。


「……っ」


 フラッシュバックしてしまった……この世界に来たときは自分の中に眠らせることに成功していた死んだときの記憶。トラックにはねられ、バラバラとなった自分の体。そうなったときの記憶。どうしようもない、死にゆく感覚。

 それを思い出してしまう。


 死ぬ。

 

 そしたら、また、あの感触を味わうことになる……嫌だっ!

 

「ガァァァァアアアアアアアアア!」


 震えを。

 どうしようもないほどの震えを抱えながら、僕は走る。

 走って、走って、走って。

 その果てに。



「サンダー」



 また新しい、女の声が聞こえてくる。


「きゅっ!?」


 そして、僕はいきなりの浮遊感に襲われる。


「かわいい蛇さんですね。大丈夫でしたか?後ろにいた魔物の方は倒しておきましたよ?」


 何が起きたのか。

 視界を持ち上げる僕の瞳に映るのは、一人の天使だった。

 腰まで伸びた長い金髪に、美しい宝石のような碧眼を持った一人の可愛らしい少女。


「きゅーっ」


 その少女が今、僕のことをその両手で救い上げていた。

 既に、後ろから僕のことを追いかけ続けていた犬の遠吠えは聞こえてこない。


「何をしているんですか。姫さん」


 僕が呆然と、自分のことを持ち上げている少女のことを眺めていた中で、その少女へと一つの人影が近づいてく。


「いや、カンナ。魔物に襲われている可愛い蛇を見つけて……」


「いや、レーヴ様。魔物に襲われている……と言っておりますが、その両手に掲げている蛇とて、魔物の一種ですよ?」


「えっ!?そうなんですか?こんな可愛らしい蛇ですのに」


「はい。その蛇はポイズンベビースネーク。紛れようもない確固たる魔物ですよ」


「……そ、そんなっ」


 そ、そんな……。


「きゅーっ」


 僕は自分を助けてくれた少女に近づき、そのまま言葉を交わしだしたその存在。

 それを見て、僕は体を震わせる───感動により。


 獣娘だ……っ。それも、かなりフェチズムの高いっ!


 人間にただ動物の耳と尻尾をつけただけではない、犬をそのまま大きくさせて人型にさせた。

 そんな獣レベルがかなり高い獣娘が今、僕の前に居た。

 背丈は目算で二メートル越え。毛が詰まっていそうな大きな胸を持ち、そこを鎧で隠す。

 そして、背中には立派な大剣を。

 そんな井出立ちをしている獣娘を前に、僕は唖然とする。

 流石は異世界。

 そんな感想を持った。


「殺しますか!?」


「きゅっ!?」


 そして、その次の瞬間。

 獣娘の人から放たれた殺気の込められた言葉に僕は体を震わせる。


「駄目です!殺しちゃだめです!それに、このままこの子を見捨てることも出来ません。今、ここで私が離しても、この蛇さんは死んでしまう可能性が高いでしょう?」


「まぁ、そうでしょうね」


「なら、飼ってもいいですか?」

 

「きゅーっ!」


 天使や!

 獣娘に震える僕は自分の前に垂らされた救いの糸を前に、歓喜の声を上げる。


「……魔物を飼うんですか?」


「ちゃんと愛情をもって接せば、懐いてくれると思うんです!たとえ、魔物であったとしても、です」


「……」

 

 天使の言葉を受け、獣娘はこちらに対して、鋭い視線を向けてくる。

 

「きゅ、きゅーっ」


 その視線に対して、僕は媚びるような鳴き声を上げる。


「はぁー。いいでしょう。その魔物からは知性も感じられますしね。許しましょう。ただし、敵対したりしたら殺しますからね」


 その媚びが通じたのか、獣娘はため息とともに天使の言葉を認めてくれた。

 後半に少し、物騒な言葉がついているけど、敵対するつもりなんて僕にはないので、ここら辺は問題ない。

 

「本当ですか!?やりました!これから一緒に暮らせますよ!蛇さんっ!……ふふっ。ちゃんと名前も考えてあげなきゃいけないですね」


「そこらへんは帰ってからにしてください。王女である貴方をずっとここに居させるわけにもいかないんですから。まずは、王城の方に帰りますよ」


「……むっ。そうですね。確かにまずは王城へと帰るところからですね」


「……きゅっ?」


 えっ?王城?

 えっ?僕、いきなりそんなところに行くの?


「じゃあ、行きましょうか」


 天使の両手の中で、これから向かうその目的地を聞いている僕はいきなりの出世ぶりに思わず体を震わせてしまうのだった。

 えっ?さっきまで死にかけていたところから一転。

 王女のペットとして、王城暮らしになるの?すっごぉー。

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