魔法適性試験

大黒天半太

魔法適性試験

 異世界からこの世界に魔法がもたらされてから、急速に地球は魔力に順応し、魔法の習得に係わる個人の魔法への適性を調べる方法も定着した。

 所謂いわゆる、魔法適性試験の始まりである。


 現代社会に魔法がもたらされた時、人類が直面したのは、各個人には、魔法に対する適性と限界があり、習得できる魔法はそれによって決まってしまうという厳しい現実であった。

 幼い頃に最初の適性試験を受けていたのならば、その後の適性の拡張や魔力の伸長・拡大による限界の上昇もありうるが、思春期を過ぎて、ましてや成人期後の成長は例外を除けばほぼ見られない。


 四大と言われる地水火風の魔法を皮切りに、光と闇、精神と肉体、その他に分類される特殊な魔法のどれに適性があるのか。

 また、その魔法の分野ジャンルでどの階程グレードまで到達できるのか。おおまかではあるが、能力の限界がわかってしまう。


 かくして、魔法研究者は適性の拡大や限界の突破の例外について解明に取り組み、魔法を習得しようとする者は同様に突き付けられた限界を超える手段を模索した。


「現在確認されている『限界突破』法は、修行による解脱・昇華デリヴァランス上位存在との接触コンタクト高レベル遺物アーティファクトの使用の三つが知られているが、実際の事例は少なく、非公表とされることが多い」

 魔法科講師の講義内容に、そんな事は耳にタコができるくらい聞いたよという顔が、高校ハイスクールの放課後の教室に集められた生徒達にあふれかえる。

 どの方法も、親の高い社会的地位と桁外れに高額な費用ステータスとコネとカネが無ければ、手が届かないのは理解している、と言った顔ばかりだ。


 ただ、現在ほとんどの大学・専門学校等の上級学校では、願書に魔法適性の記載は必須だし、虚偽記載が明るみになれば、即不合格の扱いだ。

 就職・採用試験では、特定の職種には相性の良い特定の魔法適性を持つ、或いは一定以上の高い魔法適性を持つことが条件になっている場合も少なくない。

 逆に、特定の魔法適性が高いと、安全性や信頼性の点から、忌避される職種もある。

 将来、志望の学科や職種があるのなら、魔法適性の判定結果は早目に確認しておくに越したことはない。


 そのために、こうして進路指導の一環として、中・高の進路指導では魔法適性試験結果の把握と受験指導が設けられているし、大学の就職相談では必要に応じた魔法適性の再試験の可能性も検討するのが定番化しているのだ。


 放課後の教室に集められた生徒達は、幼少期或いは小中学校の段階で、親が適性試験を受けさせなかったか拒否した者魔法を認めず拒絶反応を示した者、まれに本人が病気や怪我で受験できなかった者適性試験に耐えられなかった者もいる。高校三年生になれば、ほぼ本人が成人であり、自分の意志で受験可能となるために設けられた機会である。

 最後の適性試験時点で成人していない者には、四月一日以降最初の適性試験を受ける誓約書を提出で仮合格・仮採用の通知が発行されることになる。


 また、極々少数だが、親が魔法適性試験を不正に突破させようとして失格となった珍しい例も含まれる。

 魔法適性試験の結果が、人生の進路に大きな影響を与える以上、手っ取り早くいい成績を取ればいいと考える浅はかな手合は、どこにでも転がっている。

 実際の適性や限界と異なる偽物の試験結果などは、本人がそれに応じた成果など出せないのだから、意味は全く無い。

 魔法の無かった親世代の理解は、所詮その程度止まりであった。


 試験結果の記録上の改竄であれば、すぐ発覚するが、大抵のことはすぐにエスカレートする。

 記録の改竄ではなく、試験そのものに不正な結果を出す手法も編み出され、『限界突破』に準じた正当な手段ではなく、一時的な魔力強化薬品ポーションの使用、属性魔法が使用できるアイテムの着用、他人と同調するアイテムによる適性や限界のごまかし等多岐に渡っている。

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