第2話 魔法の基礎、剣の使い方
「流石はアルス様です。お見事でした」
「ああ。ありがとう」
「恐縮です。それでは、打ち合いとしましょうか。その前に休憩を」
俺は彼女にそう伝えられた後に頷き、休憩をとる。
「ご苦労様でございます、こちらお手拭いと水分でございます」
「感謝する」
俺は手拭いで汗を拭きながら、考える。
(もっと効率よく強くあらなければ)
この考えは、一族でも共通の考えだ。いくら嫡男がいても、他に優秀な子が入ればそちらに後継を任命される。ここは、そういう家なのだ。
(そのためにも、恵まれた才能を努力によって伸ばす必要がある)
これほどの恵まれた才能が持て余されるのはもったいない。そう考えた俺は件を持ち、魔法を知覚した2歳の時にグレイルに頼み込んだ。それから、俺は基礎を学びつつ、少しずつ、着実に努力を積み重ねている。
「アルス様、そろそろ休憩も終わりでは?」
「ああ。飲み物に拭い、感謝する」
グレイルに礼を伝えると、俺は剣を持ちサラの元へ向かう。
「それでは、お次は打ち合いを行いましょうか」
「ああ」
「私は防御に徹するので、アルス様はお好きに打ち込んでみてください」
「了解した」
俺は気持ちを落ち着けたあと…剣を振る。アルスのそれは、一振りがまるで三振り、四振りにまで及ぶようで。それを瞬時に2回も彼女の剣に打ち込む。
(アルス様はすごいお方だと騎士隊で耳にはしていたけれど、ここまでとは───ッ)
サラは何とか受けきった。
「素晴らしい剣です。3歳だと言うのにそこまで至るとは…正直、私から実戦形式で新しく教えることは無いかと存じます」
「いや、俺などまだまだだ。それに、俺は人と打ち合うことで自分の欠点を見つけ出すことが出来る。それに気づけば貴殿も注意してくれる。それだけで、俺は成長できるのだ。そんなことを言うな」
「…申し訳ございませんでした。まさかそこまでお考えとは思わず」
「いや、いい。それでは私の剣に何が足りないのか、教えてはくれまいか」
サラは頷き、アルスに向けて課題を伝える。
***
「それでは本日はこれでおしまいです」
「うむ。なかなか有意義な時間だった。ありがとう」
「恐縮です。それでは」
そう言うと彼女は稽古場を去った。
「アルス様、昼食にいたしますか?」
「いや、少し汗を流す」
俺は風呂場へ向かう。3歳なので、グレイルが付き添いだ。
「アルス様、今日の稽古はいかがでしたか」
「自分の弱点を再認識できた。暇さえあれば自主稽古に付き合ってくれないか」
「もちろんでございます。このグレイル、アルス様のおねがいとあらば」
髪を流し、体を洗いながらグレイルと他愛のない会話をする。
「昼食はハーブのソテーにシチュー、そして白米でございます」
「分かった。体を吹いて髪を乾かすから、グレイルは手配しておいてくれ」
「畏まりました」
グレイルは一礼するとアルスの前から去った。そのままアルスは髪を乾かし、とかした後に服を着こみ、昼食を食べに向かった。
「第三魔法士隊隊長のヘイル・ガルザと申します。今日はよろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼む」
「それではまずは基礎からですね。魔力とは何ですか?」
「生まれながら人が保有する、心臓から生成される生命力とは別のエネルギー。生命力に比例して魔力は増大する。また、平時の保有魔力量は、胎児の成長度合いによる」
「よろしい。それでは、魔力を知覚し、手のひらに集めてみましょう」
そうして俺は目を閉じ、胸あたりに力を込める。
(あった)
目を閉じても、見えるものは見える。魔力もその一つである。
(…)
最初は意識しないと難しいが、慣れれば意識しなくとも、魔力を集めたいところを思い浮かべれば直ぐにできる。アルスはそれをやってのけた。
「素晴らしい。基礎は完璧ですね」
「いや、俺もまだ意識しないと魔力を集めることが出来ない箇所がある。まだまだ未熟だ」
「アルス様のいう未熟は、我々もあてはまってしまいそうですよ」
「なに、研鑽を積んでいる諸君ならすぐに超えられるだろう」
「もちろんです。それでは、魔法の放出と身体強化魔法、防御魔法の稽古に移りましょう」
そうして、場面は変わり、魔法を打ったあと。
「アルス様は構成に関しては文句のつけ所がございませんが、発動に少し問題ができたようですね」
「詳しく教えろ」
「はっ。発動に若干のズレが生じております。後々に悪い癖とならぬよう、矯正した方がよろしいと存じます」
「ありがとう。おかげで自分も気付かぬ欠点に気づくことが出来た」
「いえ。これくらいは当然でございます」
そのまま、稽古は続き、夕方。
「それでは本日はこれにてお終いとしましょう」
「ああ。また指導を頼む」
「その機会がございましたら拝命いたしましょう。それでは失礼します」
そう言うと、彼は稽古場から去っていく。
「風呂を沸かしております。その後は夕食といたしましょう」
「ああ」
夕食を食べ終えたあと。アルスは図書室へ向かう。彼は図書室にある蔵書を2歳から読み始め、3歳になった現在半分ほど読み終えている。今アルスが呼んでいるのは、地理の本。ドメリア大帝国と、その周辺国家の立地上の関係である。
(ドメリア大帝国は中央大陸の7割を占める大帝国だ)
ドメリア大帝国。西側は複数の国家と、それ以外は中央大陸の海岸に接している、文字通りの大帝国。アルスの住むこの国では、貴族制が採用されており、厳格な法の下で全ての民が平等に生活している。
(次は、ロッカサス王国)
ロッカサス王国。ドメリア大帝国の西側に位置し、立地上各国の交通の要衝となり、交易により繁栄を極めている。中央大陸西の玄関口とも呼ばれる海港都市ゼーロは、ロッカサス王国王都に匹敵する巨大さだと言う。
(その北側に、ジネーブ王国)
ジネーブ王国。かつてはロッカサス王国の属領だったが、貴族たちの反乱により、独立。ロッカサス王国とは真正面から敵対しており、ドメリア大帝国ともうひとつの国に停戦交渉の仲介をよく頼み込む。中央大陸では唯一の民主主義で、現在は国民思いの首相が国を主導している。
(一方、南側には、ファラン連合)
ファラン連合。文字通り、複数の小国からなる連合国家。各国の国王が集まり、今後の方針を定める会議は公開されており、民にはあらゆる情報が共有される。
アルスはまたページをめくり、知識を蓄える。これもまた、強くなるため。
それから2年。アルスが5歳になり、オーラと神聖力を扱うようになった年の出来事。
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