神と言うなの化物に

稲荷 和風

第1話 ソウグウデアイセッショク

「こんな日常、うんざり…」

そう呟き、学校へ重い足取りで冬休み中補習へ向かう女子高生「無愛(むあ)」


雪の降る通学路、下を向き、イヤホンで何やら音楽を聞きながら、憂鬱と感じながら歩いている。途中の稲荷神社にお参りをし、鬱々しく神社をあとにする。

学校の入口が目と鼻の先に見えていた。


イヤホンをしまい、スマホの電源を切り、校舎に入っていく。


変わらない日常が壊れたのに気づいたときには遅すぎた。


気づいた時には、


「変化していた(国が乗っ取られていた。)」


学校の窓からこちらを覗く、巨大な異型の何かに気づいたと同時に学校中の先生と生徒のスマホから、いままで聞いたことのない大音量の警報がなり響き急いでスマホを見ると、一通の通知がロック画面にデカデカと表情されていた。


通知をみた先生は絶句し、生徒はざわついている。やがて校内に放送が入る。

「ただ今教育委員会から指示があり、教職員の皆様は一度、職員室へお戻りいただき、生徒の皆さんは速やかに体育館へ移動してください。」


無愛の補習を受け持っていた教職員は無愛に荷物を持ち、体育館に行くよう支持し、補習を受けていた無愛は荷物を持ち、体育館へ急いだ。


体育館に急ぐ道中、トレーニング中だったボート部や陸上部が無愛を追い越し、我先にと体育館の扉を押し開けていた。


体育館にやっとの思いで集まる生徒たち、普段の集会とは違い、バレー部が部活中使う、高いネットやバスケ部のバスケゴールがあるせいか,狭苦しく、並ぶことすらできずにいた。


片付けようにも教職員の指示を仰ぐものが片付けようとするものを止め、口論になっていた。


補習や課外を受けていた生徒、文化系の部活の生徒たちはただ教職員が来るのを待つしかなかった。


無愛も例外ではなく、スマホの警報、校内放送に窓からみたあの異型の何か、とてもただ事とはとても言えなかった。


あの異型の何かには無愛だけではなく、この学校の全員気づいていた。生徒たちはどうすべきか意見を述べたが、それが裏目に出たのか、いつしか軽い口論から喧嘩へと発展していった。その騒ぎを聞きつけた異型の何かはゆっくりとこちらを見ていた。


それからしばらくし、

教職員らが体育館に来たときには体育館はもはや惨状と化していた。


死人は出ていないものの、窓からみえたあの異型の何かが、体育館に集まっていた生徒に危害を加えていた。


腕や足が骨折した生徒、出血している生徒を介抱する保健委員の生徒、急いで駆けつける保健師。


異型の何かから、逃げどまう生徒達や、生徒を守ろうと、落ち着けようとする教職員。


無愛は逃げようとし、固まって動けなくなっていた。

それに気づいた異型の何か(化物)は無愛に向かい、触手を振り上げていた。


教職員の一人が無愛を助けようとするも、間に合いそうにない。


化物の触手が無愛を叩き潰そうと迫る、誰もが諦めかけたその時、何かが素早く無愛を体育館の外へ連れ去り、助けた。


勢い余りグラウンドに押し倒された無愛が目にしたのは、少なくとも人間ではなかったが見たことがないほどの美少年だった。


美少年はなぜだか嬉しそうに無愛を見下ろしていた。


立派な大きな狐の耳をいわゆるヒコーキ耳のように低く保ち、鎌のような形状の尻尾を左右に激しく揺らしていた。


大きなカラスの翼で無愛をしっかり守ろうと広げていた、


ガラス細工のような淡い色をした、左右違う色の瞳には、無愛しか写っていなかった。


戸惑いを感じている無愛の元へ再び体育館にいた化物が奇声を発しながら近づいてきていた。


「ゥヴォエアラアヤラア…」


逃げようにも美少年に押し倒されたまま身動き一つ取れないでいる無愛。


やっと美少年が奇声の主に気づくとそれまでやさしげだった目つきはギロリと鋭くなり、瞳も獣によく似た瞳孔へ変化してゆく。


威嚇とも取れる声を発し、押し倒した無愛をおもむろにおぶったかと思えば体が大きく、獣のように変わって行く。目の前の化物と同じくらいの大きさになり、獣の姿へと変貌していた。


無愛を包み込む程度の大きさだった翼は大きく、無愛が隠れても誰にもわからぬちょうどいい大きさであった。


爪は伸び、尻尾は鎌のような刃の部分が見え隠れしていた。顔や外見は狼そっくりの外見であった。


人の姿では見られなかった立派な角も生え、口元からは蛇のような牙が伸びていた。


異型の化物はまばたきする間に、変わり果てた美少年に鋭い爪で切り裂かれ、鋭利な牙が体に刺さり、最終的には見る影もなくなっていた。


そこらじゅうに化物の残骸が飛び散り、美少年は元の姿へと戻ったが、髪や口元には血がベットリとついていた。


無愛は目の前で起きた光景に衝撃が隠せずヘタレこんでいた。


美少年は「汚い」と言いたげに口元の血を拭うとヘタレこんでいた無愛に思い切りだきつき、無愛をどこかへ連れ去ってしまった。

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