第8話 優しい歌、そして真実

「『真実を知りたくば風に音色を、闇から超えたければ番人を倒せ』ねぇ」


 3人で石板の前に来た。ボク以外は読めないけど、口頭で伝えることが出来るようになったのはよかった。

 シェインはペンダントを見つけていた。


「そのペンダントは?」


 ボクはなぜこの場でペンダントを出したのかを気になっていた。


「シェインは本当の両親がわかんないんだって」

「そう、ここから俺も両親のことをしてるかなとワンチャン賭けたけど、やっぱ竜人族用だなこれは」


 と言ってペンダントをしまう。


「問題は風に音色…ボクに音を出す魔術を使えってことかなぁ」


 頭を抱えながら考えている時にキャリナが一つ思い浮かぶ。


「歌えばいいんじゃないかな?」

「歌、かぁ…」


 ボクはさっきまで声を出すことが出来なかったので歌のレパートリーがない…


「歌わないなら代わりに歌うぞ!」

「コラっ!」

 

 2人が場を和ましているのか本気で歌おうとしているのか気になる…。


「幼い頃に聞いた曲とかある?」

「幼い頃……」


 キャリナの意見で目を閉じて考え出す。そこには懐かしい母さんの姿が思い浮かんだ。すると自然に歌っていた。



愛しき子よ ゆっくり眠れ

今日のあなた 頑張っていたね

愛する子よ ぐっすり眠れ

あなたの明日 じっくり見たいの


いつか一緒に大空へ飛びましょう

どこか楽しい世界で遊びましょう


大好きな子よ ゆっくり育て

あなたの姿が 親の誇りよ

側にいる子よ 元気に育て

離れていても 愛してるよ


生まれて来てくれてありがとう



 ………気づいていたら泣いていた。ずっと前からボクを愛してくれたし育って欲しかったんだ…生きるのを諦めようとしたこと…本当にごめんなさい……。


「大丈夫?」

「うん」


 キャリナが心配してくれた。ボクは手でゴシゴシと涙を拭った。


「おい、石板が光ってるぜ!」


 確かに光っている。…感覚的にボクが触れと訴えているように感じる。ボクは石板に手を当てた。



『竜人族の子よ。あなたは何を知りたい?』


「声はどこから!?」

「俺たちにも聞こえるとは親切だね」


 さっきまではボクしか聞こえてなかったのに今度は全員…何がどう違うんだろう。…と、質問をしなきゃ。



剥鱗はくりん病について詳しく知りたい」


剥鱗はくりん病…以前別の遺跡で尋ねた竜人族がいましたね。この病気はとある竜人族に恨みを持った呪術師が生み出した呪いです。今現在では呪術師の特定が完了し地下深くの牢獄で罪滅ぼしさせています。呪術師が牢獄にいる限り、新たな剥鱗はくりん病の被害者は現れません』


「そう…だったんだ…」


 予想斜めの答えでボクは困惑した。


『それと、あなたの母親のおかげであなたが元暮らしていた町に他の剥鱗はくりん病患者は現れませんでした。彼女は町いた患者から呪いの力を癒しの力で吸い取っていました。その結果町中の呪いを彼女1人で受けただけで済みました』


「母さん…母さん……」


『町の人たちは今では申し訳なく感じている方々ほとんどです。あなたはこれまでよく頑張りましたね。これからも竜人族を見守る者としてあなたの未来を見させていただきますね』



 気づけば石板の光が無くなっていた。病気は、呪いは、すでに終わっていたことだったんだ。だから…。


「さーて帰りましょっか!イェルは疲れてるだろうし」

「疲れていると言っても精神的にもだろ。いけるか?」


 シェインとキャリナはボクと一緒に帰ろうと話しかける。


「………うんっ!」



 ボクは泣きながら笑顔で大きく頷いた。

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