第7話 声と、風の力を

 しかし、クォーツドラゴンは強敵だった…


 「刺突連撃斬!」

 「砕破剛爆!」


 カンカン、キーンッ!


 シェインの剣術もキャリナの斧術も聞いていない。物理系が聞かないんだ。ならば、こっちは魔術で!


「イェル!危ない!!」


 キャリナの声で目の前までクォーツドラゴンの尻尾が振り出され避けた。本当に危なかった。


「しょうがない…キャリナ!イェルと一緒に逃げろ!」

「突然何言い出すの!?」

「この人数じゃ部が悪い、俺が囮になるから戦いそうな人をギルドでも連れてきてくれ!」

「シェイン!あなたは!」

「俺は大丈夫だ!行け!!」

「嫌よ!いやいや!!」


 違う

 ボクは2人をこんな目に遭わせる為について来てもらったわけじゃない。ボクが…ボクのせいで…やっぱりボクは…呪われて…



——あなたは呪われていません——

 

 その声は…誰?


——全て自分の責任だと感じているだけです——


 だったら…どうすればいいんだよ…


——自分を受け入れるのです。存在していいと——


 存在していいの…?


——あなたはまだ可能性があります。そして声も——


 可能性…声…。


——勇気を出して声を、風の力を取り戻して——


——あなたなら出来るはずよ、イェル…——


 その声は…言い方が違ったけど、母さんの声だった…



「くっそぉ…まだ死んでたまるか!!」

「3人で…帰るんだから!」


 気づけばシェインとキャリナが危ない!傷は…薬品で何とか保っているようだけど…。

 さっきの声から…声と風の力を取り戻して。

 ………。今は過去と関係ない、2人がピンチで番人を倒さなきゃいけないんだ。大事なのは過去じゃない、今なんだ。ずっと引き摺っていては母さんと父さんを何度も苦しませているのと同じだ。


 だから、過去を捨てろボク!今やるべきことを始めるんだ、ボク!!


「…ぐ…ぅ…ぉ…ぉ…ぅ…」


「イェル?もしかしてダメージを?」

「いや、違う!これは…」


「ぐぅがぁぁぁぅぅぅ!!」


 2人を驚かしてしまったけど、やっと声が出た!ボクはまた喋れるんだ!!気づけば風の力と竜人族特有の魔力が溜まっていた。今必要なのは…。


「我竜と風の力を司る…竜麟の力に癒しの風を我友の元へ運びたまえ…ヒールスケイル!!」


 竜の鱗のような魔力の塊が風の力によってシェインとキャリナの傷を癒す。


「回復魔術ね!ありがとう!」

「だが、クォーツドラゴンを倒さなきゃジリ貧だぞ」

「ならば、我は竜と闇の力を司る、どんな輝きも切り崩す闇の力を我友に宿たまえ!エンチャントスケイル!」


 シェインとキャリナの武器に闇属性が付与された。これならば魔術攻撃と同じはずだ!


「イェル、ありがとう。2人で決めるぞ!」

「ええ!」


 剣術と斧術のコンビネーションが息ぴったりだ。


「「双撃・暗殺斬!!」」


 番人のクォーツドラゴンは2人の攻撃で四つに切り分けられた。そして、砂になり溶けて消えてった。


「あー、鉱石のままだったらいい値段で売れそうなのになぁ」

「やめとけ、番人の呪いがついてるぞー」


 シェインとキャリナは元気そうでよかった。

 

 

 あとは銅像にあった石板を調べるだけだ。

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