第1話 助かった命

「あなたがモタモタしてなかったら良かったのに!」

「それは…肝心のペンダントを盗られちまったら困るし…」



 話し声が聞こえる。さっきいた場所じゃない…宿の中かな?まだ、身体が痛むや……。


「あ、目を覚ましたんだね!」


 女性の冒険者かな…ボクが起きたことに気が付いたみたい。その人はゆっくりと近くにあった椅子に腰をかける。


「大丈夫?まだ痛むかしら?」


 ボクは頷く。


「あそこで何をしていたか教えてもいいかな?あっ!あたしキャリナっていうの!あなた名前は?見た感じ竜人族みたいだけど」

「おいキャリナ、質問攻めを怪我人に押し付けるなよ」


 もう1人の冒険者がキャリナという人を止める。あの人は中性的な顔をしているけど、男性だと思う…。


「俺はシェイン、今はゆっくり休んだほうがいい。話はその後でいいから」


 ボクは頷いた。その方が楽…だけど…。


「イェルちゃんの部屋はここ?大丈夫かい!?」

「わわっ!びっくりしたぁ…」


 シェインとキャリナの間にずいっと来たのは薬屋のセイカおばさんだった。どうやら近くの町に来てたみたいでホッとした。


「よく効く薬を用意したからね!お代はいつもお世話になっているから無しで大丈夫よ!」


 刺激が強いがよく効く薬を塗ってくれた。痛みがだいぶ楽になった。ボクはありがとうのお辞儀をした。


「うーん、さっきからこの子喋ってない気がするけど…口の中も怪我してるんじゃないかしら?」


 キャリナが言うとおばさんはこう返した。


「イェルちゃんはね…喋れないんだよ」

「えっ…」


 キャリナは驚いていた。一方シェインは…


「大声を出して助けを呼べなかった理由、これで納得するな…」


 と言うがボクに対して心配そうな顔で見ていた。


 

 そう、ボクは喋れないのだ……。

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