第3話 デートをしよう 前編
昨日の夜、私は竹内くんとデートの約束をしました。家に帰ってからは、嬉しくて心臓が痛いほど脈打っていて、勢いでデートの定義まで調べてしまいました。どうやら男女が日時を決めて会うことやその約束のことを言うらしいです。やっぱりこれはデートです…!
勉強会後、長篠茜は自分から言いだしたデートのお誘いを思い出し恥ずかしさと興奮によりベッドの上をゴロゴロと転がり続けていた。
なにせ彼女にはおよそ恋愛と呼べる経験がなかった。知識として持っているのは、漫画やドラマなど手しか見られないであろう胸キュンシーン位の話だ。
興奮が収まらずいても経ってもいられなくなった彼女は、ベッドからガバッ、と音が立つような勢いで飛び起きクローゼットから明日着ていく服を選び始めた。
「う〜ん…、これはなんか違うしこっちはちょっと張り切り過ぎかな……」
何着か取り出してきた服装を見比べ、試行錯誤。
姿見の前で服装を悩む姿は、さながら恋愛真っ只中の少女のようであった。
「………うん。明日はこれにしよう」
三十分ほど悩み尽くし、彼女の中で最適解が決まったようだった。
服を選び終えたところで彼女はあることに気づく。
―――――――自分と彼が、まだ連絡先を交換していないことに。
おそらく今の今まで言い出せていなかったことである。彼女は一週間近く経っても未だに連絡先を知らないことを非常に悔やんだ。
そして彼女は決意する。
「明日は絶対、連絡先を聞こう……!」
彼女はそう意気込んでから眠りについた。
そして翌日となった。
早く着きすぎました。
現在時刻九時四十五分、予定時間よりも十五分早いです。
これでは私がものすごく張り切りすぎて早く着いてしまったみたいではないですか!………でも実際そうです……。
まずいです。自分から誘っておいて緊張してきました。深呼吸、深呼吸です!
しばらく思考を巡らせた後、彼女は何回か大袈裟に深呼吸をした。
「す〜…、は〜〜。……す〜〜、はぁ〜〜……」
「な、長篠さん!」
「ピャ、はい!って、あ。竹内くん…」
「ごめん、待たせたよね?」
「いえいえ、全然さっき来たばっかです!………あの、竹内くん。一つお詫びしたいことがあります」
「えあ、何でしょう……?」
何か重要なものだと考えた彼は体がガチガチの状態からさらに身構えた。
「私……、私が自分から誘ったにも関わらず緊張しています……!」
「………はい?」
「すみません…、なにせ恋愛経験がないものですからこういう時どうしたらいいのかさっぱりで……」
「長篠さん、俺も一つ言わせてください。―――
――――――俺もエグいほど緊張してます」
「………え?」
「俺、もう昨日から興奮とか緊張とか凄くて!明日になったら案外落ち着くかなって思ったんすけど、現時点でフルパワーで緊張してます」
彼女は予測していなかったのだろう。
張り詰めていたものがいともあっさりとなくなって、笑いがこみ上げてきた。
「ふふ、あっははははは!!」
「?!長篠さん?!どうしたの突然?!」
「あはは、いや、竹内くんも緊張してたんだなって知ったらなんか一気に緊張の糸がプツンって切れちゃった」
「あ、え?そ、そりゃあよかった?」
「ふふ、あ〜よかった!これで今日はもう緊張しさそうだよ。じゃあそろそろ行こっか」
「あ、はい」
「私さ、竹内くんと言ってみたい所あるんだよね」
そう言うと彼女は彼の手を握った。恋人繋ぎとはまだいかないものの、それは恋愛初心者の二人にとっては十分すぎるものだった。
不束者ですがどうぞよろしくお願いします。 椿カルア @karua0222
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