インターバル 休息の時間
環境の変化
白一色だった部屋の壁の一部がスライドし、背後に控えていた別室が現れる。
そこには、簡素なテーブルと椅子、数種類の軽食と水が並んでいた。
「…随分と“親切”だな。」
カズキ(5)が低く呟く。
「親切じゃなくて、“管理”されてるだけよ。」
アイリ(8)は食事を手に取りながら答えた。その動きはどこか警戒心を含んでいる。
参加者たちは、それぞれの考えを胸に秘めたまま、無言でテーブルに着席していく。
アキラは端の席に腰を下ろし、記憶の断片を整理するかのように目を閉じていた。
その前に立ったのは、レンジ(9)だった。
「話をしよう。」
レンジが静かに言う。
「何の話だ?」
アキラは目を開けてレンジを見上げる。その目には警戒心が宿っていた。
「お前が言った“犠牲”についてだ。」
レンジは椅子を引き、向かいに座る。「それだけで終わる話じゃないだろう。」
「俺が何をしたかは、お前には関係ない。」
「違うな。お前の記憶が、俺の記憶とも繋がっている可能性がある。」
レンジは冷静な表情を崩さない。「犠牲になった人間の中に、俺の標的がいた可能性がある。」
その言葉に、アキラは一瞬だけ表情を強張らせた。
「ねえねえ、ケンタさん。」
サクラ(2)は軽い足取りでケンタ(10)に近づく。
「なんだよ、サクラちゃん。」
ケンタは笑みを浮かべて答えるが、その目は警戒の色を帯びている。
「ケンタさんって、誰かを売ったんだよね?」
無邪気に言い放つサクラ。その言葉に、ケンタの笑顔が微かに引きつる。
「おいおい、そういう話をするなら、もっと静かにしようぜ。」
「どうして? 聞かれたらまずいことなの?」
サクラの声には無邪気さ以上のものが含まれていた。
「いや、別にそういうわけじゃないけどさ…」
「ふーん。じゃあ次のゲームでは、もっと面白いことしてね!」
そう言い残し、サクラはスキップするように去っていった。
ケンタは深く息を吐き、額に浮かんだ汗をぬぐった。
ショウ(7)は他の参加者たちと距離を置き、壁際で腕を組みながら立っていた。
「ショウ、何してるの?」
ミカ(3)が心配そうに声をかける。
「…何でもない。」
ショウは短く答えた。「ただ、考え事をしてるだけだ。」
「さっきの記憶のこと?」
ショウは微かに眉を動かし、黙ったまま視線を逸らした。
「俺が何を思い出そうと関係ない。」
冷たい声だったが、その背中には重い影が宿っているように見えた。
4. ユウスケとカズキの対立
「お前、冷静すぎる。」
ユウスケ(4)はカズキ(5)を睨むように言った。
「それが何だ?」
カズキは食事を口に運びながら答える。
「人を殺した記憶を取り戻しているのに、その態度は異常だ。」
「異常かどうかを判断するのはお前じゃない。」
カズキは静かに箸を置いた。「俺は、自分の感情をコントロールする術を知っている。それだけのことだ。」
「ならいいが…」
ユウスケは疑いの目を向けながらも、それ以上は何も言わなかった。
『モニタリングルーム』
広大なスクリーンには、全ての参加者たちの動きが映し出されている。
権力者たちが椅子に腰かけ、それを観察していた。
「ショウが面白い動きを見せ始めたな。」
「アキラとレンジの関係も注目だ。犠牲者と標的、興味深い。」
「サクラの無邪気な言葉は、ただの演技じゃないだろう。」
主催者はスクリーン越しに冷笑を浮かべた。「さて、次のゲームを盛り上げる準備を始めるか。」
休憩時間が終わりを告げると、再び無機質な声が部屋中に響く。
「これより第二ゲーム『協力と裏切り』を開始する。」
参加者たちは静かに円卓へと戻り、緊張した面持ちで声の続きに耳を傾ける。
「このゲームでは、チームとして課題を解決しなければならない。ただし、全員が協力しない限り成功は難しい。だが…」
声が一瞬止まり、不気味な間が訪れる。
「この課題には、裏切り者がいる。」
参加者たちが一斉にざわめく。
「裏切り者を見抜き、排除することでのみ、課題は成功となる。そして、裏切り者が最後まで正体を隠し通せば、課題は失敗となる。」
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