協力と裏切り(記憶への疑念)

課題1: チームで真実を選び取れ


ホログラムスクリーンに表示された4つの文章──


「プレイヤー6は、過去に誰かを救った。」

「プレイヤー10は、かつて詐欺で多くの金を稼いだ。」

「プレイヤー2は、特別な力を持っている。」

「プレイヤー1は、誰かを犠牲にして生き延びた。」

「この中で、2つだけが真実だ。」


参加者たちは議論を続けていたが、どこか焦燥感が漂い始めていた。


1. アキラの揺るぎない主張(プレイヤー1)

「4番は真実だ。」

アキラ(1)は短く言った。「これは俺自身の記憶にある。犠牲になったのは確かだ。」


「その記憶、改ざんされてない?」

ケンタ(10)が軽く笑う。「ここじゃ誰だって記憶を操作されてるかもしれないんだぜ?」


「確かにそうね。」

ミカ(3)が首を傾げる。「自分が戻ったと思っている記憶が、正しい保証はどこにもない。」


「それを言い出したら議論にならない。」

レンジ(9)が冷静に切り返した。「俺たちが語るべきは、あくまで“今信じられる記憶”だ。」


2. ケンタの自己主張(プレイヤー10)

「だったら、2番も確定でいいだろ?」

ケンタは堂々と笑った。「俺が詐欺師だったのは、この場の全員が知ってる。これを疑うなら、そいつの方が怪しい。」


「その開き直りが怪しいけどね。」

カズキ(5)は低く呟く。「裏切り者が、そんなに素直に話すとは思えない。」


「素直に話すことで、かえって疑いを遠ざける作戦かもしれないわね。」

アイリ(8)が静かに補足した。「自分が怪しい行動をしていること自体が、“信じさせる”ための演技という可能性もある。」


「おいおい、そんなの推理じゃなくて妄想だろ。」

ケンタは肩をすくめたが、その目には微かな焦りが浮かんでいた。


3. サクラの曖昧さ(プレイヤー2)

「3番、私が特別な力を持ってるってやつだけど…。」

サクラ(2)は口元に指を当て、首をかしげた。「みんな私がそんなすごい人に見える?」


「“無邪気さ”というのは時に恐ろしい力になるものだ。」

レンジが冷静に指摘する。「お前自身が意識していなくても、特別な力を持っている可能性は否定できない。」


「レンジさん、怖いよ!」

サクラは笑いながら返した。「でも、私は本当に何も覚えてないよ?」


「覚えていないからこそ、本当に力を持っている可能性がある。」

アイリが言葉を重ねる。「曖昧さは、時に真実を隠すための仮面にもなる。」


4. ハルキの冷淡な証言(プレイヤー6)

「1番についてだが、俺は否定する。」

ハルキ(6)は冷静に言った。「俺が誰かを救ったという記憶はない。」


「記憶が戻ってないだけかもしれないじゃないか。」

ユウスケ(4)が問いかける。「今、ここで自分の記憶だけを根拠に話すのは危険だ。」


「だからと言って、根拠のないことを認めるわけにはいかない。」

ハルキは視線を動かさずに答えた。「今ある情報で判断する。それが俺のやり方だ。」



「なあ、裏切り者はどうして黙ってるんだ?」

ケンタが疑念を口にする。「ここで一言でも嘘を言えば、議論がもっと混乱するはずだろ?」


「裏切り者が沈黙を守ることで、疑心暗鬼を増幅させている。」

アキラが低く言った。「それが目的だろうな。」


「つまり、全員が裏切り者の可能性を疑われる状況を作っている。」

レンジは冷静に頷いた。「沈黙もまた、裏切りの一つの形だ。」


議論の結論

ホログラムスクリーンの下に表示されたキーボードを前に、参加者たちは結論を出した。


「2つの真実を選べ。」


アキラがキーボードに手を伸ばし、選択を入力する。


「プレイヤー10は、かつて詐欺で多くの金を稼いだ。」

「プレイヤー1は、誰かを犠牲にして生き延びた。」

「これが俺たちの選択だ。」

アキラは短く言った。


結果発表

ホログラムスクリーンが赤く点滅し、数秒後に無機質な声が響く。


「選択結果: 成功」


「成功…した。」

ユウスケが小さく呟く。「裏切り者がいたのにか?」


「裏切り者が動かなかった可能性がある。」

アイリが低い声で言った。「今回の課題では、動く必要がないと判断したのかもしれない。」


裏切り者の存在

「裏切り者が動かなかった?」

ケンタが不満そうに言った。「じゃあ、次でいきなり動くってことか?」


「その可能性は高い。」

アキラが静かに答える。「今回、俺たちは運が良かっただけだ。」


「次も同じとは限らないわね。」

アヤコが言葉を継いだ。「裏切り者が誰かを見抜く必要がある。」

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