第四の告白者 ケンタ 10

「次の告白者を指名します。」

無機質な声が再び響き、部屋に重苦しい緊張が走る。モニターに映し出された数字は──


“10”


「…俺?」

ケンタ(10)は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔を取り戻し、ゆっくりと立ち上がった。


「いやー、ついに俺の番か。皆さん、お手柔らかに頼むよ。」

軽い口調でそう言いながらも、彼の手の動きは少し震えていた。


ケンタの自己弁護的な言葉


「まあ、俺なんて普通の人間だからね。」

ケンタは周囲を見渡しながら、肩をすくめた。「カズキみたいにプロの殺し屋でもないし、ミカみたいに助けない選択をする看護師でもない。」


「…そんな軽口でごまかさないで。」

アヤコ(11)が眉をひそめる。「あなたにも何か秘密があるからここにいるのよね?」


「はは、そりゃそうだ。でも…俺が話す内容なんて、みんな期待外れかもしれないよ。」


ケンタの告白


「俺は…人を売ったことがある。」


その言葉に、参加者たちは一斉に凍りついたような表情を浮かべた。


「売った…?」

ユウスケ(4)が低い声で問いかける。「それはどういう意味だ?」


「そのままの意味さ。」

ケンタは口の端を引き上げて笑った。「俺は、金になるなら誰だって売るような仕事をしてた。」


「仕事って何?」

サクラ(2)が首を傾げる。


「ま、裏の仕事ってやつだよ。要は人を“商品”として扱ってたってことだ。」



「最低ね。」

ミカ(3)が小さく呟く。


「言い訳の余地はないな。」

レンジ(9)が冷徹な声で言う。「つまり、君は金のために人間性を捨てたわけだ。」


「そう言われても仕方ないな。」

ケンタは薄く笑ったが、その目には揺らぎが見えた。


質問タイム開始


「質問タイムを開始します。」

無機質な声が響き、参加者たちは次々にケンタに質問をぶつけた。


質問 1: ユウスケ(4)

「その“売った”相手はどんな人間だった? 無差別に選んでいたのか?」


ケンタは笑みを引っ込め、少し真面目な顔で答えた。

「基本的には、俺が選んだわけじゃない。依頼が来たら、その対象を引き渡すだけだ。」


質問 2: ミカ(3)

「引き渡した相手がどんな目に遭うか、想像したことはなかったの?」


「想像なんてするわけないだろ。」

ケンタは冷たく言い放つ。「俺がやるべきなのは、金を稼ぐことだけだったんだから。」


質問 3: アヤコ(11)

「その仕事を始めた理由は? 家族や誰かのためだったの?」


「違うね。」

ケンタは肩をすくめた。「ただ、楽に稼げる方法を見つけたからやっただけ。それ以上の理由なんてないよ。」


質問 4: アイリ(8)

「その“仕事”をしていたとき、自分が悪いことをしているって気づいていたの?」


「そりゃあ、最初は少しは感じたさ。」

ケンタは薄く笑った。「でも、何度もやるうちに、そういう感覚なんて麻痺するんだよ。」


判断タイム

「質問タイム終了。」

無機質な声が告げると、参加者たちはそれぞれの判断を口にし始めた。


判断 1: ユウスケ(4)

「真実だと思う。」

ユウスケは硬い表情で言った。「話に具体性がありすぎる。」


判断 2: ミカ(3)

「嘘。」

ミカは強い口調で言った。「自分の行いをそんなに軽々しく話せる人なんているはずがないわ。」


判断 3: サクラ(2)

「真実かなー!」

サクラは笑顔で言った。「ケンタさん、嘘つくの下手そうだもん。」


判断 4: アヤコ(11)

「真実。」

アヤコは小さく頷いた。「自分の行いを隠そうとしていない。だから、信じる。」


結果発表

モニターに大きく浮かび上がる文字──


“真実”


記憶の報酬とペナルティ


正解者: ユウスケ、サクラ、アヤコ


ユウスケは「誰かを救うために嘘をついた過去」の記憶を取り戻し、硬い表情を崩さない。

サクラは「大人たちに囲まれた異常な光景」の記憶を思い出し、一瞬だけ無表情になるが、すぐに笑顔を作る。

アヤコは「自分の子供を失った日の記憶」を取り戻し、涙をこらえるように目を閉じた。

不正解者: ミカ


ミカは額に手を当て、苦しげに「何かが…消えていく…」と呟く。

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