第三の告白者 カズキ 5

「次の告白者を指名します。」

冷たい声が響くと、参加者たちが再びモニターを注視する。その瞬間、空気が一層重くなる。


“5”


全員の視線がカズキに集中する。


カズキの登場


「俺か。」

カズキ(5)は立ち上がりながら、不快そうに眉をひそめた。


「いいじゃないか、カズキさん。筋肉の話とかでも聞きたいな~!」

ケンタ(10)が軽口を叩くが、カズキは無視して円卓の中央に視線を向けた。


「くだらない。」

短く呟き、深い息を吐く。「分かった。話せばいいんだろ。」


カズキの告白

「俺は…人を殺したことがある。」


その告白に、部屋中が凍りつく。


「この告白、さっきも聞いた気がする。」

ケンタが皮肉交じりに笑う。「で、どう違うんだ?」


カズキは冷たい目でケンタを睨んだ。「俺は冗談は言わない。仕事だったからな。」


「仕事?」

アヤコ(11)が鋭い声で尋ねる。


「俺は、かつて特殊部隊に所属していた。命令を受けて動くだけだった。だから俺の手が血に染まることは仕事の一部だった。」


「つまり、正当防衛ってやつ?」

サクラ(2)が無邪気に尋ねるが、その言葉には棘がある。


「正当防衛ではない。命令を遂行しただけだ。」

カズキの声は感情を欠いていたが、その瞳にはかすかな影が揺れていた。


「命令に従ったと言う割には、自分の手で殺したことを誇ってるようにも見える。」

レンジ(9)が静かに言った。


「貴様に俺の心情が分かるのか?」

カズキが低く怒鳴るように言ったが、その声にはどこか自分への苛立ちも混じっていた。


質問タイム開始


「質問タイムを開始します。」

無機質な声が響き渡る。


質問 1: ミカ(3)

「その命令って、どんな状況で出されたの? 本当に必要な指示だったの?」


カズキは短く息を吐き、冷静に答えた。

「必要かどうかは上が決めることだ。俺に選択肢はなかった。ただ、目の前の対象を排除するだけだった。」


質問 2: アイリ(8)

「その対象って、どんな人だったの?」


「敵だった。」

カズキはそれだけ答えた。


「それだけ?」

アイリが微かに首を傾げる。


「それ以上知る必要はなかった。俺はそう教えられてきた。」


質問 3: ユウスケ(4)

「命令だから従ったというのは、言い訳だと思わないのか?」


「何をほざいてる。」

カズキはユウスケを鋭く睨む。「お前がその場に立ったら、命令に背いてでも自分の正義を貫くか?」


「…。」

ユウスケは答えなかった。


質問 4: サクラ(2)

「ねえねえ、殺したとき、どんな気持ちだったの?」


カズキは短く笑った。「何も感じなかった。感情を捨てろ、それが訓練だった。」


判断タイム

「質問タイム終了。」

無機質な声が告げると、参加者たちはそれぞれの結論を考え始めた。


判断 1: ミカ(3)

「真実だと思う。」

ミカは小さく言った。「彼の話には迷いがない。本当にそうだったんだと思う。」


判断 2: ケンタ(10)

「俺は嘘に賭けるよ。感情が全くない殺人なんて、ちょっと信じられない。」


判断 3: サクラ(2)

「真実! カズキさん、すっごく怖い目してるもん!」


判断 4: アイリ(8)

「嘘ね。」

アイリは静かに言った。「何も感じないというのは、人間らしくないわ。」


結果発表

モニターに文字が浮かび上がる──


“真実”


記憶の報酬とペナルティ


正解者: ミカ、サクラ


ミカは「医療現場で助けなかった患者の最後の姿」を思い出し、顔を曇らせる。

サクラは「幼少期に感じた孤独の記憶」を取り戻し、一瞬だけ表情を硬くするが、すぐに笑顔を取り繕う。

不正解者: ケンタ、アイリ


ケンタは「…ま、仕方ない」と軽く流す。

アイリは冷静に目を閉じるが、その額に一筋の汗が浮かんでいた。

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