第2話 秘密結社の求人
太陽の光を一身に浴びながら駅へと向かって歩き続ける。
近くの駅は新快速が止まらない駅なので新快速が通過する時に飛び込もう。そう思いながら1歩、また1歩と歩を進める。
駅へと近付く度にこれまでの思い出が頭の中をぐるぐると回っていく。
親が死ぬまでの幸せな記憶が、死んでからの辛い記憶が、冤罪をかけられ、孤立し、何もかも上手くいかずに無理に笑おうとしたあの日々が思い出される。
明日こそはきっと良い日になる。そう思ってこの年まで生き続けたがついぞ良い日にはならなかった。放火犯と言うやってもいないレッテルが足を引っ張り続けた。
「僕はなんのために生まれてきたんやろなぁ……」
思わず漏れたその声は、誰の耳にも入らず消えていく。
◈
なにか別の方法はなかったんやろうかと駅に着く直前まで考える。
死ぬとしても色んな人に迷惑をかけることは辞めた方がいいんじゃないかと思ってしまう。
それでも最後くらい、迷惑をかけたっていいじゃないか、とも思う。
放火犯にされてから色んな人に迷惑をかけられた。いじめも受けて、進学も取り消されて、バイトも受からず見ず知らずの人間にも罵倒され、放火で家を失った人からも責められた。
僕が何したって言うんよ。僕その日日雇いでバイトしよったんやで?調べれば簡単にそんなん分かるはずやのに頑なに警察は僕が犯人やと言ってきおった。なんなん?
思い出せば思い出すほど人に対する恨みが溢れ出して止まらない。優しくしてくれた人もいたはずなのに顔すらも思い出せない。
辛い目にあってきたから誰かを辛い目にあわせてもいいなんてことは全く思わん。それでも最後は迷惑かけたいねんから仕方ないやろ。
僕はそう思いながら駅に到着した。
◈
改札へと歩いているといつもはスルーしてしまう掲示板にふと目を奪われた。
懐かしいなぁと思う。昔はよくここら辺で募集されてたバイトとかに応募してたもんや。
結構給料良かってんなぁ……。
昔を懐かしみながら一つ一つの求人に目を通していく。
その中で1つなんやこれ?と思う求人を見つけた。
「【秘密結社の一員募集中!月給50万円に土日祝は完全休み。寮もあるよ!】……?なんやこの求人。ツッコミ待ちか?」
なんでこんな人の目に着くところで秘密結社の求人があるん?まず秘密結社って何?つか待遇ホワイトすぎやろ。
次から次へとツッコミ所が湧いてきて止まらない。なんなんやろうかこれは、と思いながらも少しだけ面白そうだな、とも思う。
どうせ死ぬんやったらこんなん詐欺やろうけど応募してみても良いかもな。
……あーでもスマホないんや僕。電話出来んやん。
諦めたくないねんけどなーと思いながら辺りを見回してみるとutubeが開きっぱなしになっているスマホが落ちているのを見つけた。
今日死のうとしてた人間にとって、窃盗なんてものは躊躇う要素にはならない。
人が来ないうちにすぐさまそのスマホを拾って求人表に載っていた電話番号から電話してみる。
プルルプルルプルル……ガチャ
4回ほどコールが鳴った後に電話が繋がり、スマホの奥から声がする。
『はいこちら秘密結社【
「駅の掲示板にあった求人表を見て電話させてもらったんですけど……まだ募集ってしてますかね」
『ほう……あれを読めたんですね。ではこちらから伺おうと思うのですが駅とは〇〇駅で合っていますでしょうか』
あれを読めたんですねと言う言葉に少し首を傾げながらも合ってます大丈夫ですと返事を返す。
『かしこまりました。少しお待ちくださいませ』
そう言ってツーツーと電話が切れる。
先程の話からしてこっちまでやってくるということだろうか。身体的特徴なんて何も言ってないし合流出来るのかどうか……。
そう考えていると突然横から女性に声をかけられる。
「先程電話していただいた方で間違いないでしょうか」
「えっ……えっ!?あっはい秘密結社の求人には募集しましたけど……」
突然のことに驚きかなり大きい声を出してしまったがしっかりと問いには答える。
気が付けば僕の横には何故かメイド服を着た薄い紫色の髪をしたスレンダーな長身の女性が佇んでいた。
「良かった。ならばこれから面接をするので目を瞑ってください」
「何故目を……?まぁはい分かりました」
そう言って目を瞑ると少しの浮遊感が体を襲いなんだか不思議な気分になる。
◈
着きましたと声をかけられたので混乱しながらも目を開ける。
目に飛び込んできた景色はさっきまでいた駅のものではなく、真新しそうな印象を受ける大きな家のものだった。
「……どういう?夢でも見てんのかな僕」
「いえ夢ではありませんよ?現実です。それではご主人様がこの先で待機しておられるので向かいましょうか」
「えっまだ僕混乱して……ってちょっ!待ってくださいよ!」
スタスタと歩いていってしまったメイドさんを追いかけ家へと入る。中も綺麗で本当に新品のようだ。
「こちらです」
歩くこと少し、1つの部屋の前でメイドさんが指を指しながら僕の方を向いて言う。
「こちらにご主人様がいらっしゃいますのでどうぞお入りください。ノックとかは不要ですしあまり力も入れずに自然体でどうぞ」
「そんな事言われましても……」
そう答えながらもドアをガチャリと開け中へと入る。変な状況に困惑しながらもそれに勝るドキドキやワクワクがあった。
「おー!よく来てくれたのじゃ新人よ!儂はこの秘密結社鬼灯のボス!
部屋の中は広々としていて、色々な家具が置かれていた。真ん中の方に机や椅子があり、その椅子に座った漫画でよく見る着物を着た黒髪の幼女?が僕に話しかけてくる。
その幼女の頭には2本の角が生えていた。
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すこーしだけ重い話がありましたがここからはそんな話は少なくなるのでご安心ください。ありはします。今後も。
読みにくい所や表現が違う所があれば教えてください。
モチベに繋がるので感想や♡や星沢山ください。星100目指してます。
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