第22話 桃犬会談⑤

 いま、ここで犬帝国と同盟を結べず、戦いとなってしまえば、勝ち目はなく、桃太郎の命も危うくなるため、この要求を呑むしかないが、桃太郎がボロボロであることがばれれば、犬帝国が攻め込む可能性もありました。

 栗鳥栖は部下に合図を送り、桃太郎をこの城から即刻逃がさなければならないことを万次郎に伝える指示を出し、そして、自身は一刻でも多く時間稼ぎをするため、犬の皇帝に対していいました。

「確かに、桃太郎農園の事態は、犬の皇帝殿がお考えするようになっております。しかし、いまこの場に桃太郎はおらず、話し合うことは難しいため、一度撤退を…」

 と話している途中、城の最上階の扉が一気に開き、音が響き渡りました。栗鳥栖たちと犬たちはそちらに一斉に振り返ると、そこには桃太郎が立っていました。

「犬の皇帝よ。貴様の思考の深さに敬意を表する。俺は貴様を歓迎し受け入れる!この城に上がって、ともに語ろうとしようじゃないか。」

 桃太郎は包帯がまかれ、ボロボロでありましたが、立ち姿は凛々しく、力強さを感じさせるものでした。この姿は犬の皇帝にいまここで攻め込むことは得策ではないと思わせるほどのものでした。犬の皇帝たち、桃太郎の提案に応じ、城に向かっていきました。


 城に入った後、犬の皇帝と桃太郎は長い石の机を挟み、向かい合いました。広間には緊張した空気が張り詰め、控えていた栗鳥栖、柿万次郎を含む家臣たちも一言一句聞き逃すまいと耳を傾けておりました。

 まず、桃太郎が静かに口を開きました。

「犬の皇帝よ、今回の巨大樹の件について話さねばならない。あれは私の力によるものではない。むしろ、私自身も驚き、困惑しておる。何者かが未知の力を用いて引き起こしたのだろう。その原因を突き止めねばならぬ。」

 桃太郎の目には憂いと責任感が混じっていました。しかし犬の皇帝は眉をひそめ、不快そうな様子で応じました。

「ふん、桃太郎農園に被害が及んだだけの話ではないか。我々犬帝国には何の影響もない。協力せよと言いたいのだろうが、それは筋が違う。そちらの問題だ。」


 犬の皇帝の声には冷たさが含まれており、その場の空気をさらに冷やしました。それでも桃太郎はなお言葉を続けようとしましたが、犬の皇帝は鋭い目つきで言葉を遮ります。

「それに、植物を操る力を持つ者など聞いたことがない。我々の知る限りでは、植物を操れるのはお前だけだ。仮に今回の巨大樹の件が貴様の仕業でないとしても、同じ種族の誰かによるものだと考えるのが当然ではないか?」

 その言葉に桃太郎の家臣たちはざわつきましたが、桃太郎自身は静かに相手を見据えておりました。柿万次郎は居ても立ってもいられず、一歩前に出て言葉を発しようとしました。

 しかし、桃太郎は柿万次郎を右腕で制し、犬の皇帝に対して一瞬の間を置き、深く息を吸い込むと毅然とした態度で言いました。


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