愛情耐久試験~ヤンデレな女の子の愛にどれだけ耐えられますか?~
八国祐樹
愛情耐久試験
俺、四条健二は今日、愛情耐久試験を受ける。
彼女いない歴=年齢の俺にとってこれは、一世一代の大勝負となるだろう。
だってこの恋愛耐久試験に合格すれば、可愛いお嫁さんと一生遊んで暮らせるお金が手に入るのだから。
これは少子化を食い止めるべく政府が打ち出した施策だ。
男性の生涯未婚率は既に40%を超え、このままだと日本は崩壊する。
だから18歳になった男子にはこの恋愛耐久試験を受けさせ、無理矢理に結婚させてしまおうという訳だ。
俺としては願ったり叶ったりである。
だって『可愛い』嫁がもらえるのだから。
公文書でちゃんと『可愛い』って書いてあるのだから、じゃあ受けるしかないじゃん? 別に拒否権とかないけどさ。
しかし試験内容がなんなのか、全く知らされていない。ネットにも情報ないし。
一体何をさせられるんだろうか。
係の人に通されたのは真っ白な部屋。扉は一個。照明も一個。窓はなし。
正直不気味だ。
「健二さーん」
その時、扉が開いた。
現れたのはえっちなお姉さんだ。もうそうとしか言いようがない。
胸元が大きく開いた黒いオフショルダーのトップスにめっちゃ短い白のフレアスカート。おっぱいが大きくて顔も可愛くて肩口で切り揃えられたセミロングの黒髪がさらさらと揺らめいていた。
「ひゃ、ひゃい」
しまった。緊張で声がっ!
「ふふ、緊張してるの? 私はミカ。よろしくね」
「よ、よろしくおねがいすまし!」
ミカさんはいたずらっぽい笑みを浮かべると俺の頬に手を当てる。
距離が縮まったからか、なんかいい匂いがした。それだけで脳みそが沸騰しそうになる。
「健二さんは、かっこいいね?」
「え、あ、ありがとうございます?」
なんの脈略もなく褒められた。悪い気はしない。
でもこれどういう状況? 俺は何をすればいいんだ。
「私、実は健二さんの前々からいいなーって思ってたんだ」
「前々……? えーっと、すみません、どこかでお会いしましたっけ?」
「あぁーやっぱり覚えてないんだ。ほら、ちょっと前に駅で財布落とした時にさ」
「あ、あー! あの時のお姉さん!」
確かに以前、駅で財布を届けたことがあった。あの時はぴっちりとしたスーツを着たしごできっぽいお姉さんだったから全然分からなかった。
「あの時から、健二さんのこといいなぁって思ってたんだぁ」
「え、でも会ったのその一回きりですよね? 名前だって名乗ってないし……」
「ふふ、そうだね。でもね、私その時感じちゃったんだ」
そのワードチョイスにちょっとだけドキリとする。
「な、なにを……?」
恐る恐る口を開くと、ミカさんは真っ直ぐな目をして、
「運命」
そう答えた。
「運命、感じちゃったの。私はこの人と結ばれる運命にあるんだって。私が健二さんを幸せにするんだって。だからこうしてまた逢えたのが嬉しくて嬉しくて……」
頬を赤らめながらミカさんは続ける。
「ねぇ、軽い女って思われるかもしれないけど……こんな私じゃ嫌?」
もしかして、愛情耐久試験って、そういうことか?
女の子からの愛を受け止められるかってことなのか?
おまっ、そんなの。
こんな可愛いお姉さんなら大歓迎に決まってるだろ!!
なんだよ恋愛耐久試験、楽勝かぁ!?
なんかネットで合格率0.01%とか見たけど嘘じゃん!
こんなの男子からしたらご褒美でしかないじゃん!
「全然嫌じゃないです!」
俺は喜び勇んで答えた。嫌な訳がなかろうて!
「ほんとに? どんな私でも受け入れてくれる?」
「もちろんです! どんなミカさんでも受け入れます!」
「ほんとに? 幻滅しない?」
「幻滅なんてそんなする訳ないじゃないですか! 俺だって男です。二言はありません!」
いやぁ、ついに俺にも春が来ちゃったなぁ。
これで合格したら、もしかしてミカさんと結婚するということになるのか?
さ、最高じゃねぇか! こんなおっぱい大きくて美人で俺のこと好いてくれる女の子とか多分一生かかっても出会えない。
まさに人生バラ色。俺の青春は今ここからスタートを切ったのだ。
ありがとうミカさん。ありがとう愛情耐久試――
「じゃあ、血……吸ってもいい?」
「……………………は?」
ち……?
ちってなんだ。舌打ちか?
なんて考えていたら、ミカさんが俺の首筋に噛みついてきた。
「いたっ!? え、なに!? は!?」
「んく……んく……。あぁぁぁあああ、もう最高……健二さんの血……おいしいよぉ……やっぱり運命の人だと味わいも濃厚で……うぅん癖になっちゃいそう」
ミカさんはうっとりとした声を上げる。
え、なに、え、こわい、なに急に、どういうこと。
「や、やめてください。離れてください」
「やーだ。私のこと受け入れてくれるんでしょ?」
一体誰が目の前の女が吸血鬼まがいの変人だと気付けるだろうか。
そんな約束は当然反故だ。性癖の後出しは重罪だ!
「無理です! 血を吸う人とは結婚できません! ごめんなさい無理です! マジで無理! てか痛い!」
ミカさんはぬらぁっと俺から離れる。やけに血色が良さそうに見えるのは俺の血が唇についているからだろうか。そうであって欲しい。
「うーんだめかぁ。じゃあ第一試験は不合格ね」
「え?」
瞬間、俺の真下の床が落とし穴みたいにパカッと開いた。
「ぬわあああああああああああ!!!!???」
何かを思考する間もなく、突然の衝撃。
「ぶはぁ! な、なんだ!? なんだこれ!?」
意味不明な事態の連続に俺の頭はショート寸前だった。
とりあえず死んではいないらしい。下はボールプールになっていて、大した高さでもなかったようだ。
「意味わかんねぇ……なにあの人……こえぇよ……」
人生で初めて血を吸われるというとんでも体験をしてしまった。
後にも先にもこんな経験は一度きりだろう。頼むからそうであってくれ。
ボールプールから這い上がって辺りを見渡すと、またさっきと同じような真っ白な部屋だった。
奥に扉が一つ。
さっきミカさ――あの吸血鬼女は第一試験と言っていた。
つまり第二第三の試験があるということだ。
マジかよ。やべーよこれ。俺やべーとこに来ちまったよ。
つまりこれが愛情耐久試験の本質、ということだ。
あの吸血――くそったれ変態吸血鬼女のような奴がまた現れるかもしれない、ということだ。
なぜ合格率0.01%なのか、理解した。
むしろあれに理解を示せる奴が0.01%もいることに驚きを隠せない。みんな凄いな。勇者だよ勇者。
その時、がちゃり、と扉が開いた。
思わず体がびくついてしまう。
「健二先輩」
現れたのは、可愛らしい女の子だ。
茶髪をサイドテールにまとめた背の低い女の子。制服を着ていた。うちの高校の制服だ。
なんか……見たことあるような……。
先輩って言ってるから後輩なんだろうけど……あんまり記憶にない。
「あ、もしかして先輩。私のこと覚えてないですね?」
「あ、あぁーごめん……ちょっとど忘れしちゃって」
「ミユですよ。ほら、女テニ一年の」
「あ、あー! ミユちゃんか!」
俺は男子テニス部に所属しているのだが、女子テニス部とは一緒に活動してないにしろ色々と交流がある。
確かにミユちゃんとは何度か部活のことでお喋りした気がする。
「もう、忘れん坊なんですから。まぁそんな先輩も大好きですけど」
その言葉で、俺の警戒心はマックスまで高まった。
いやマックスどころではない。天元突破した。大気圏を越えた。
「先輩……? どうしました……?」
「いや、ミユちゃんも……俺のこと好きなの……か?」
「はい、それはもちろん! 大好きです!」
後輩が自分のことを好いてくれている。そんなラブコメ主人公みたいな状況を目の当たりにしても、俺の心はちっとも浮足立たなかった。
それもこれも全部くそったれ――変人変態くそったれ吸血鬼女のせいだ。あいつのせいで全てを疑わねばならなくなった。どうしてくれるんだ。
「そんな心配しなくてもいいですよ。先輩」
「ミユちゃん……?」
ミユちゃんは胸の前で手をぎゅっと握り締めた。
「私は先輩のことが大好きです。愛しています。けど、ただそれだけです。見てください、私のこの瞳。先輩の綺麗な瞳でよく見てください。嘘をついているように見えますか?」
「う、うーん……?」
確かに綺麗な瞳だ。ぱっちりと大きくて活力があってきらきらしている。
これでハイライトのない真っ黒な瞳だったらボールプールに逃げ込んだのだが、そういう感じでもなさそうだ。
「嘘はついて……ないかな?」
「じゃあ、何も我慢しなくていいんですよ。先輩の全部、私が受け止めてあげます」
両手を開いたまま、ミユちゃんはゆっくりと近付いてくる。
正直な所、俺は揺れていた。ミユちゃんはとびきりの美少女だ。小さくて可愛くて線が細くて、でも女性らしい肉付きもちゃんとしていて、すっごく可愛い。
可愛いからまぁ別になんでもいっか、という気分になってくる。
というかなった。男なんてそんなもんだ。単純なのだ。
俺はミユちゃんをぎゅっと抱き締めた。やっぱりいい匂いがする。
「先輩、ちょっと高いです。屈んでくれませんか?」
「え? お、おう」
言われたとおりに屈むと、ミユちゃんはその胸の中に俺を抱き留める。
おいおいおいおい。マジかよ。なんだこれ最高かよ。
今俺、女の子の胸に顔を埋めてるよ。彼女いない歴=年齢の俺が。
こんなことってある? いやあるのだ、ここでは。
愛情耐久試験では、そんなことが起きてしまうのだ。
なんだ、やっぱりここは天国なんじゃないか。最高じゃないか。
うーん、このまま一生こうしていたい。さっき俺の心に刻み込まれた傷もミユちゃんに癒してもらおう。
はぁ、なんたる癒し。なんたる夢心地。
やっぱり俺の人生バラ色だ。俺の青春は正真正銘、今ここでスタートしたのだ。
ありがとうミユちゃん。ありがとう愛情耐久試――
「先輩の瞳……本当に綺麗ですよね……」
「……………………ん?」
なんだ。突然どうした。
「まんまるできらきらで、すっごい素敵……あぁ……食べちゃいたいくらいです……。先輩の全部、私が食べちゃいたいです。手も足も体も首も口も鼻もほっぺも瞳も、全部全部私が食べて私だけのものにしたいです。いいですよね? 我慢しなくていいですよね? 先輩は私だけのものだから、私も先輩だけのものだから、だから私が食べちゃってもいいですよね? ね?」
「あ、ひ……ひゃ……」
声が出ない。
逃げようと思ったのに、足に力が入らない。
「いただきまーす」
ミユちゃんのぬらぬらとした舌が眼前に迫ってくる。
恐怖でしかない。逃げたい。なのに体は動かない。本当に怖い時って、人間って動けなくなるんだ。知らなかったよ、俺。
ミユちゃんの舌が、ぴとり、と俺の目に触れた。
「あ、ぐぎぎぎぎひゃ……!」
ぬるん、と舌が目を這う。
「はぁぁぁぁ……美味しい……」
無理。ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ。
「ごめん! 無理!」
なんとかそれだけを捻り出した俺は、
「……ざーんねん。それじゃあここも不合格ですね」
「――またこれかよおおおおおおおおおおおお!!??」
再びボールプールに落下した。
「ぶはぁ! マジでやばい。マジで怖い。もうやだここ怖い。お家帰りたい。早くここから出してくれ。このままじゃイカレちまう」
ボールプールから這い出ると、やはりさっきと同じ白い部屋……ではなかった。
奥に扉があるのは同じ。でも部屋の右側に蛇口のようなものがあった。
あれだ。小学校の水泳の授業で使う目を洗うあれ。シャワーみたいな細かい水が上に向かって出てくるあれ。
あれが置いてあった。
「ちっ、用意周到かよ」
ありがたいが、舌打ちしたい気分だった。だからした。
俺の心はもうぼろかすに荒んでしまったのかもしれない。
蛇口のハンドルを捻って目を洗う。
あぁ、全てが洗い流される気分だ。これ最高じゃね?
まさか地獄のシャワーと並んで小学校の水泳の授業で嫌いなものベスト2のこれに感謝する日が来るとは思わなかった。
やっぱりちゃんと目は洗わないとな。汚いからな。マジで。本当に大丈夫か、これ。変な感染症とかなったりしないよな?
十分に目を洗浄し、手探りでハンドルを捻って水を止める。
そういえばハンカチとかなんも持ってきてない。ちょっと汚いけど服の袖で拭くか。
「はい、タオル」
「ん、さんきゅー」
もふもふのタオルだ。ありがたい。これで綺麗さっぱり――
「はっ!!?」
俺は思いっきり飛び退いた。
もう3人目がいたのか!? 一体今度はどんな邪知暴虐の女が来て――
「……カナ?」
「や、やっほー健二くん……」
目の前にいたのは、幼馴染のカナだった。
幼稚園からずっと一緒の、とっても可愛い女の子。
クリーム色の長い髪を真っ直ぐに落とした、清楚な女の子。
ちょっと恥ずかしがり屋な面もあるけど、誰に対しても優しく接して、人気者で、明るくて、いつも笑顔を絶やさない、そんな女の子。
「な、なんでカナがここに……?」
「な、なんでと言われるとちょっと困っちゃうというか……今はまだ答えられないというか……」
恥ずかしそうにもじもじと指を合わせるカナ。
だが俺は、そんないつもの可愛らしい一面を見ても、胸がどきどきするどころか体が底冷えする感覚に陥った。
「カ、カナにも……実は特殊な性癖があったりして……?」
「え、性癖……? 急にどうしたの?」
カナはきょとんと小首を傾げた。
それはとぼけているのか、本当にないのかどっちなんだ。
くそっ、先の二件のせいで完全に疑心暗鬼になってしまった。カナも特殊性癖の持ち主だったらどうしよう。俺は受け入れることができるのだろうか。無理……いや、カナなら意外と……ええい分からん。
だが一つ言えるのは俺はノーマルだ。許容できるものには限度がある。
「先に言っておく。俺はノーマルだからあまりにニッチ過ぎるのは勘弁してくれ。これ以上はトラウマになる」
というかもう既に結構トラウマだ。
「大丈夫だよ。私はふつーだから」
「本当に?」
さっきも同じこと聞いて裏切られた。
「本当だよ。でも、その……性癖……じゃないけど、健二くんには言わなきゃいけないことがあるんだ」
「なんだよ、それ」
カナは余程言うのが怖いのか、何度も深呼吸を挟む。
え、怖い。なにそれ。そんな溜めてまで言うことってなに。
どうしよう、耳から脳髄を啜るのが好きなの、とか言われたら。いやそれはもうエイリアンだ。エイリアンはこの世にいない。いやさっきの二人もエイリアンみたいなもんか。俺にとっては宇宙人と変わらんな。
結論、エイリアンはいる。
そんなバカな考えを巡らす内に、カナは勇気を振り絞って、
「私、小っちゃい頃から健二くんのことが本当に本当に大好きで、いつもいつも健二くんのことばっかり考えてたの!!」
口早に叫んだ。
「…………ん? それだけ?」
「え、それだけって何!? わ、私すっごい勇気振り絞ったんだけど!?」
「あ、いや……それはそうなんだろうけど……」
え、本当にそれだけ?
本当に特殊性癖はない、のか?
脳髄啜らない?
「私、健二くんと出会ってから、健二くんのこと考えなかったことなんて一日もないよ。いっつも健二くんのこと目で追ってたし、会いたいなぁ早く学校始まらないかなぁって考えて……大好きで大好きで……でも、気持ちを伝えるのが怖くて……」
「カナ……」
「こんな私、健二くんは嫌……? き、気持ち悪いよね……こんなの――」
「そんなことないッ!!」
俺は、堪らず叫んだ。
「カナのこと、俺も前々からいいなって、好きだなって思ってたよ。でもカナはすっごく可愛くて、俺なんかに釣り合う人じゃないって……勝手に諦めてた。でも、俺ももう自分に嘘をついたりしない。俺もカナが好きだ。大好きだ」
「健二くん……」
俺はカナを抱き締める。めちゃくちゃいい匂いがした。
「カナ……俺と付き合って――」
「それじゃあ、結婚しよっか?」
「……………………ん?」
結婚?
あれ、ここって告白の場面であってプロポーズの場面じゃないよな。
「相思相愛なら何も問題ないよね。
私、健二くんのお嫁さんになるのが夢だったんだ。健二くんがお仕事行って、帰ってきたら、ご飯にする? お風呂にする? それとも……ってやるのが夢だったの!
ふふ、嬉しいなぁ。健二くんといつか必ず結ばれるって分かってたけど、高校生の内に結婚できるなんて思わなかった。
ね、健二くん。新婚旅行はどこがいい? やっぱり海外? それとも国内? 温泉旅行とかもいいよね。露天風呂付の個室で、二人一緒にお風呂に入って……そういえば一緒にお風呂入るのなんて小学生ぶりだね。あの頃の健二くんは可愛かったなぁ。あ、もちろん今の健二くんはとってもかっこよくて自慢の旦那さんだけど――」
「カ、カナさん……?」
カナは俺の目をじっと見つめる。
ハイライトのない、真っ黒な瞳で。
「私、健二くんが好き。世界で一番、誰よりも愛してる。健二くんは私のもの。私も当然健二くんのものだよ。健二くんのしたいことならなんでもしてあげられるし、なんでも叶えてあげる。だから健二くんも、私だけ見て? これから先、一生、ずぅっと、私だけを見てて? 私も、健二くんだけに愛を捧げるから」
俺は震えた。
そりゃぁもうぶるっぶるに震えた。
なんでかって?
だってこんな、こんなの――
(普通のヤンデレ、最高だぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!)
血は吸わない! 目も舐めない! 脳髄も啜らない!
ただ愛が重いだけ! ただ俺のことがめちゃくちゃ大好きなだけ!
それって最高では!?
今までの二人に比べたら、ただのヤンデレ属性なんて全然、全く、マイナス要素になんてなりえない!!
「カナ……俺は今感動してる……」
「え、なんで泣いてるの?」
「嬉しくて、嬉しくてな……あとなんか、心の底からほっとした」
「ふふ、大丈夫。私はどこにもいかないよ」
俺はカナを強く抱き締める。強く強く。もう絶対に手放さないというように。
「よし、それじゃあ早速結婚しよう。婚姻届を出しに行こう。今行こうすぐ行こう」
「あ、その……婚姻届ならそこに……」
カナはボールプールを指差す。
ボールをかき分けて底を見ると、クリアファイルに挟まった婚姻届があった。
既にほとんど記入済みで、後は俺が名前を書くだけ。
ちなみに証人の欄には、既に俺の両親の名前が書いてあった。
ちっ、用意周到かよ。この舌打ちは喜びの意味。念のため。
「それじゃあ行こうか。役所に」
「うん! 健二くん。これからも末永くよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
こうして俺の愛情耐久試験は終わった。
結果は第一試験、不合格。第二試験、不合格。第三試験、合格。
合格1、不合格2で、どうやら不合格らしい。
でも別にがっかりはしない。
一生遊んで暮らせるお金は手に入らなかったけど、『可愛い』嫁をもらうことはできたのだから。
俺達は白い部屋を立ち去る。
――こうしてまた一組、少子化改善の一助となる夫婦が誕生したのであった。
――――――――――――
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愛情耐久試験~ヤンデレな女の子の愛にどれだけ耐えられますか?~ 八国祐樹 @yakuniyuuki
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