8.ぼくのいろ
「はぁっ!」
「おおう⁉︎け、結構強いな」
「そりゃこの年にしたらね…」
今日は珍しく休みの父さんと遊んでもらっている。
いつもは専らミーナちゃんと遊んでるんだけど、今日は逆にミーナちゃんが出かけてていないというレアな日だ。
父さんは仕事で、母さんはママ友と毎日のように開くお茶会いいのかそれでで忙しいので、せっかくだから騎士団に勤めている父さんにちょっと武術を教えて貰おうと頼んでみたら、嬉しそうにOKしてくれた。
早く俺に剣の稽古をつけたかったらしいので俺の異常な成長はむしろ都合が良かったんだとか。相変わらず子供みたいな人だ。
といった経緯で冒頭に至る。
「とりあえず打ってみろ」
といきなり短い木剣を渡されて、打ったのを父さんが素手で受けたリアクションだ。0歳にして腕立て伏せが日課である俺の全力だ。それなりに痛かっただろう。
まさかもう剣を振らせてくれるとは思ってなかった。俺がむやみに振り回したりしないと判断したということだが、もう一度言っておくと俺はまだ1歳にもなっていない。まああと1カ月くらいで1歳だけどな。それでもこの年の子供に木剣とはいえ剣持たせるかね。
危険察知能力の低い父親を心配しながら俺は剣を振る。今度は父さんも木剣を使って受けにきた。痛かったねーごめんねー。
「ふっ!」
「うん、なかなか良い剣筋だ。こりゃあ近いうちに本格的に教えてやれるかもな」
「本当⁉︎」
「ああ」
そう言ってニンマリと笑う父さん。歯と青いネックレスがキラリと輝いて見えた。
「あ、そうだ。ねえ父さん」
「うん?なんだ?」
「父さんの青色は剣の才能を意味してるんだよね?」
「ああ」
「じゃあ僕の紫は何を意味してるの?」
ネックレスの色を見て思い出した疑問をぶつけてみる。初めて喋ったときにミーナちゃんが答えようとしてくれたのだが、直後硬直してそのまま答えてもらえなかった。
そこで本を読んでみた。
この世界の人々は生まれてからちょうど1日経ったときに透明のアクセサリーを親につけてもらう。このアクセサリー自体はどんな種類でもいいが、魔法でできた透明のものでないとダメなんだそうだ。
そしてアクセサリーが変化した色がその人の才能を示す。剣術なら青、槍術なら黄、体術なら黒、弓術なら白、そして魔術なら赤だ。また、色が濃いほどその才能が強く、その代わり他の武術は伸びにくくなる。
父さんは濃い青が出ていて、昔から剣を叩き込まれたおかげで今は騎士団の隊長として働いている。ちなみに母さんとミーナちゃんは濃い赤色でイーナさんは少し透明に近い白だ。つまり、グレイステネス家ではイーナさん以外は他の武術ができないということだ。属性魔法の適正にしてもそうなんだけど、1つの才能が強ければ強いほど他の才能は伸びにくい、というなんとも歯痒い世界だ。
簡単に言えば馬鹿のひとつ覚えか器用貧乏しかいないということで、なんでもできる万能型の人はいない。確かに公平っちゃ公平なんだけどね。
ここで皆様にお聞きしたい。誰に言ってんだ。
お気づきになっただろうか。紫はどの適正の色でもないことに。
そう、どの本を読んでみても紫なんて色は載っていなかったのだ。なんてこった。
そこで父さんなら知ってるかも、と思って聞いてみたのだ。
「お前も知ってるだろうが、紫はどの適正の色でもない。」
「うん」
「ところが稀に2つ以上の武術に対して同じくらい強い適正を持つ人間が生まれることがあるんだ。」
「2つ以上?」
「ああ。そして2つ以上適正を持つと、それぞれの色が混ざった色になって表れる。
お前の紫の場合は青と赤、つまり剣術と魔術の適正があるんだ。」
「おお‼︎」
これは素晴らしい!地味にチートじゃあありませんか!
しかし剣術と魔術か…。いつどやの
「シャ○ドゥビタッチヘンシーン!」
はフラグだったのかもしれない。
俺も順調にチートへの道を進んでるなあ~。
目を輝かせる俺に、父さんが
「まさかお前、もう魔法使えたりしないよな⁉︎」
ときいてきたので前髪をぐちゃぐちゃにしてやった。その晩は大騒ぎになったことは言うまでもない。
あんまり親は驚かすもんじゃないね。
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