7.まどーしょ
暖かな木漏れ日が差し込む中で高く積み上げられた分厚い本を一心不乱に読み漁る赤ん坊。ーーなんともシュールな光景だ。前世の俺なら間違いなく気味悪く感じただろう。でも今の俺は感じない。何故かって?それをやってるのは俺だからさ。
つい「ハンバーーーーーーグ‼︎」と叫びたくなる冒頭だが、決してこれはアツアツのジョークではない。実際に俺は分厚い本を何冊も積み上げて読み漁ってる。ただ普通に想像したら気持ち悪かったので、少しでもそのシュールさを緩和するためにジョーク風に言ってみたのですがどうでしたか?そうでしたか…。
気持ち悪さには慣れてもらうとして、俺が読んでるのはなんと魔導書だ。他の同い年の子と比べたら圧倒的な俺の知能指数を見越して、ミーナちゃんが買ってきてくれたものだ。
魔法の入門書みたいなもので、子供が初めて魔法を学ぶときに使うんだそうだ。
しかしこの本、その分厚さと真面目くさった雰囲気に反してツッコミどころが満載だったりする。
表紙は黒と金色で、某英和辞典を彷彿とさせる見た目をしているのに対し、タイトルが
『ドキッ!初心者だらけの魔法大会~自爆もあるヨ♪~』
だった。
っておい‼︎何水泳大会みたいなノリで魔法乱発してんだよ!『自爆もあるヨ♪』じゃねぇよ!さらっと危険孕みまくりかよ⁉︎
なんとか表紙を乗り越えて1ページ目を開くと、
『自爆魔法の実験を行ってくれた勇気ある研究員に捧ぐ』
……既に少なくとも1人は逝っちゃった感じですね。まだ何にも魔法関連の知識に入ってないのに…。自爆魔法があることだけ分かったけど。いきなり自爆魔法が載ってる入門書ってどうなんだ?
ようやく内容に入ったら、魔力の感じ方から書いてあったのでスルー。でもちらっと見た感じだと
『ザザーっていうのを、ドン!』
みたいなことが書いてあった。入門書にフィーリングで書くなよ。そして何故この擬音を選んだ。テレビが映らなくなってチョップで直してるのか?
ハチャメチャな内容に翻弄されながらも、ようやく見たかった『属性』のページに辿り着くことができた。
風以外の魔法が使えない俺は、その原因を探るべく本を積み上げていたのだ。ミーナちゃんは魔導書以外にもいろんな本を買ってきていて、朝から魔導書の捜索をしてやっと見つけたページだ。少しドキドキしながら属性のところを開く。
『属性魔法は火、水、風、土、光の5つで、最初は使う人に最も適正のあるものが出ます。それぞれの属性のイメージを持って魔力を放出しましょう。基本的に適正のないものでも練習すると使えるようになりますが、1つの属性への適正が非常に高い場合は、その属性しか使えないことがあります。初めて使ったのにやけに思い通りに使えるなーと感じたら、他の属性は諦めましょう。絶対に使えません。』
なんじゃそれ…。ってことは俺は風属性に異常な適正があるのね。『絶対に使えません』とまで言われたら諦めるしかないか…。
はあーと大きなため息をつく。
そういえば『属性』のページは真面目だったなーと思った人もいるだろうが、何故かこのページだけやたら汚い字で手書きしてあった。せめて綺麗に書けよ。
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