第9話 VSリーダー格
私はリーダー格の生け捕りを頑張る。
そのためにも邪魔な取り巻き達を全員薙ぎ払った。
地面には即死したり間一髪生き残った盗賊団が転がる中、私はリーダー格の男性に近付く。
「クソッ、全員無事か!」
無事な訳が無いんだよな。だって全員倒したから。
いくら叫んでも仲間が返事を返すことは無く、リーダー格は憐れ。
ご愁傷さまに思う私は、一発で終わらせてあげようと、背後に忍び寄る。
「!? そこだな」
するとリーダー格は私に気が付いたらしい。
足音は極力消していたけれど、背後に違和感を感じたのだろうか?
咄嗟にナイフを振りかざすと、私の頬を引き裂こうとする。
「おお、怖い怖い」
「誰だ。やっぱりそこにいるな!」
私はつい声を出してしまった。
そのせいで存在が完全にバレてしまうと、リーダー格はナイフをグルグル回す。
空間を上手く潰すように突き出すと、私は容易く避けた。
「そんなんじゃ当たらないよ」
「なんだと。くっ、目が見えない……」
白煙のせいもあってか、リーダー格は視界不良を起こしていた。
煙たくて仕方が無く、つい煙を吸い込んで咳き込む。
「(ゲホッゲホッ)うっ、肺が痛てぇ」
リーダー格の男性は咳き込んでしまった。
肺に煙が溜まりつつあるのか、気持ち悪そうだ。
私はニヤリと笑みを抱き、男性に襲い掛かる。もちろん、手刀だ。
「その調子じゃ、私には届かないよ」
振り下ろした手刀をリーダー格の男性は受け止めることができない。
左肩に直撃すると、バキッ! と骨が痛む。
肌が真っ赤になると、嗚咽を漏らしてしまった。
「うやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
リーダー格の男性は脱臼する思いだった。
だけど残念。脱臼なんかの百倍痛い。
きっと左肩は動かせない筈で、往年の八クリックロボよりも動かない。
「て、てめぇ、よくもやりやがったな」
「別に、私はなにもしていないよ」
百パーセントバレる嘘を付いた。
リーダー格の男性は気に入らなかったのか、ナイフを振り回す。
「嘘が下手だな。ぶっ殺してやる!」
「動かない方がいいよ?」
「なんだと? ……なっ!?」
リーダー格の男性は突っ込んできそうだった。
けれど私は一応止めるように忠告する。
そんなことをすれば、体の方が反動で壊れるからだ。
「い、痛みがジワリとにじり寄って来やがる」
男性は気にせずに突っ込んでくる。
止めた方がよかったのにと憐れむと、案の定男性は倒れてしまった。
何かに足を躓いた訳じゃない。普通に痛みで歩けず、体を崩してしまう。
「だから言ったのに。動かない方がいいって」
私は蔑むように見下した。
しゃがみ込んで頭のてっぺんを見つめる。
まだ禿げてはいない上に、髪もちゃんと掴めそうだ。
「このまま乱暴に扱ってもいいけど、止めておくよ」
「なんだと? お前、俺のことをバカにしてんのか!」
「バカにはしてないよ。ただ、子供に見せるには悪影響が出そうだから」
私は一応少女達のことを気遣っていた。
もしこんな乱暴な真似をして、変に悪影響を与えたら後で何を言われるか分からない。
「だからこの距離で話すね。大人しく投降すること」
「断ったら?」
「別になにもしないよ。だけどね、私の食事を邪魔したことだけは許せないから」
殺す気は無いことを伝え、大人しく投降するように呼び掛ける。
けれどリーダー格の男性にはその気は無いらしい。
分かり切っていたことだけど、私には関係ない。唯一関係あるのは、せっかくの食事を邪魔したことだけだ。
「……最低なことをしてもいいけど、本当に死んじゃうから止めておくね」
私は手に持っていた醤油を【収納箱】の中に戻した。
こんなの直飲みしたら本当に命の危機だ。
脅しにもならないと思い行動する前に止めると、リーダー格の男性を煽った。
「本当に投降しないの?」
「すると思ってんのか、この俺が? 俺達が!?」
「俺達? もうみんな死んじゃったよ」
私はリーダー格の男性に幻滅した。
完全に見誤っているらしく、私は鼻で笑った。
「なん……だと? はっ、冗談だろ」
「冗談に聞こえるなら能天気だね」
私は本当のことを伝えた。
もちろん何人か生きてはいる。
けれどほとんど絶命していて、こと切れた人形だった。
「う、嘘だろ? あいつらが……」
残念なことに事実も事実。
リーダー格の男性は絶句して言葉を失ってしまう。
「と言うことで、ここで死にたくないでしょ?」
「……殺せよ」
「殺したら事件の真相が明るみに出ないよ」
「……殺してくれ。あいつらは俺にとっては家族同然だ。頼む、あいつらの所に行かせてくれ!」
「ダメだよ。リーダーなんだから、ちゃんと罪を償わないと」
私は断固としてリーダー格の提案を拒否。
まして自殺もできないように口に鞘を加えさせる。
これで死ぬことはできない。男性は見えない恐怖心に打ちのめされる。
「この依頼を受けなきゃ……」
「依頼? 誰から」
「お偉いさんさ。すぐ近くの町のな」
なるほど。盗賊団は貧乏くじを引かされたわけだ。
けれど一体なんのためにこんなことを?
事情は微かにしか察していない。けれどリーダー格の男性は完全に心折れていて、もはや立ち上がるのは不可能近い。私はほとんど魔法を使うこと無く、闇討ちに成功したらしい。
「さてと、どうしようかな? 口も割ってくれそうにないし……ん?」
そんな中、私は白煙の外側から奇妙な光を見つけた。
真っ赤な発光体が浮かんでおり、とても小さい。
まるで指輪に嵌められた宝石サイズの発光体で、真っ赤な光が私達を狙っていた。
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