第5話 固有魔法【彩奪】
「さてと、なにを狩りに行こうかな」
私はお腹がとにかく減っている。
何でもいいから腹の中に入れたい。
そんなヤンチャな気持ちになると、私は左手の甲を触った。
「【
私は左手の甲を触り、現れたホイールをクルクル回す。
その中で私は一つを選択。
本当の魔法名は【
ピカーン!
辺り一面が眩しい光に照射される。
そのせいか、視界がボヤける。
薄めになってしまうと、如何やら光は森の中を指していた。
「この光量、いいサイズの魔物が生息しているのかな?」
如何やら光量はかなりのものだ。
私の目星が立つと、早速森の中に向かう。
この魔法、サーチライトはとても効果的で、私のお気に入りでもある。
「やっぱりこの魔法があると、探索が快適で済むよ。一つずつしか見つけられないけど」
私はちょっとだけ傷な面も考慮する。
一つずつしか見つけられないせいで、一度見つけたら最後、魔法を解くまでそれだけを追う。
だから私も急いで森の中へと入ると、光量がドンドン増す。
「うわぁ、光量が強まった!?」
光量が強まると言うことは、それだけ熱が増えること。
私の左手の甲を伝い、私の腕が熱くなる。
ムッとした表情を浮かべると、森の中を見回すことも許されない。
「ううっ、熱い……」
他の魔法を使って冷やしてもいい。
けれど魔法の兼ね合い上、冷やせば熱が逃げる。
光量が少なくなれば、それだけで探索は困難になった。
「でもこれだけの光量なら、確実に……おおっ!?」
森が徐々に奥まって来た。
けれど光が一点を突き刺している。
目の前には木の群れ。この真後ろに目当ての魔物が居るらしい。
「さてと、食べられる魔物ならいいんだけど……うわぁ」
私は声を上げてしまった。
目当ての魔物を見つけて対興奮する。
木の幹の裏。そこは開けていて、丁度お昼寝中だった魔物を見つけた。
「バーベキューボア。いいね」
現れたのは巨大なイノシシだった。
鋭い牙を生やしていない。つまりはメスだ。
甘みのある脂肪分をたくさん蓄えているで有名なバーベキューボア。
ジュルリと口の中で舌鼓を打つ。
「バーベキューボア。しかもこのサイズか」
巨大なイノシシは、隊長を見ても五メートルはある。
流石に全部は要らないけれど、充分お腹は満たせようだ。
「さてと、それじゃあやろうかな」
命の重みを忘れかけている私だけど、流石に食べ物に対しては、重みを感じ取れる。
一回手を合わせつつ、バーベキューボアに近付く。
剣を抜くことはせず、左手の甲に触れた。
「久々に使ってみようかな」
私が今回選んだのは攻撃的な魔法。
バーベキューボアを苦しませずに倒したい。
何せ動いたら美味しい脂肪が減って、全然美味しくなくなる。
「【彩奪】インパクト」
私はバーベキューボアの無防備なお腹目掛けてパンチを一発。
右手の指関節をそれぞれ折り曲げ突き出す。
グサッとバーベキューボアの懐に叩き込むと、ドスン! とバーベキューボアの体がグニャリとなる。
「ボァッ!」
「あれ? 即死できなかったかな」
私としたことが、ちょっとだけミスちゃった。
久々に使う魔法だったせいか、出力を間違っていた。
困り顔を浮かべ反省すると、怒ったバーベキューボアが起き上がる。
「まあだよね。怒るんだよね?」
バーベキューボアは血走った目をしている。
私のことをジッと睨み、顔をブルブル震わせる。
鋭い牙は無いけれど、鼻からグスングスンと鼻音を立てる。
「あはは、どうしよう」
私は頬を掻くと、バーベキューボアから距離を取る。
スッと半歩ずつ射程距離から外れた。
そのおかげか、バーベキューボアはジッと私を追って来る。
「来ていいよ。命の重さだからね。逃げて光に帰るか。私に殺されて闇に消えるか。どっちがいい?」
私はバーベキューボアに語り掛ける。
殺気を飛ばして見せたのだが、まるで気にしてくれない。
四肢を使って地面を蹴り上げ、小石を巻き上げ私に向かって来る。
牙は無いが鼻先がスタンプのようで、私に押し付けようとする。
「来たね。それじゃあ……死んで」
【彩奪】を発動し、再びインパクトを使う。
今回も昔奪った……というより託された魔法だ。
【
「今度は間違えないようにな、それっ!」
ズドーン! と轟音が響き渡る。
私の拳はバーベキューボアの鼻を劈く。
あらゆる魔力が一点に注がれ、バーベキューボアの骨が砕けた。
バキッ! と嫌な音を立てる。もちろん私じゃない。
バーベキューボアの鼻が折れてしまうと、そのまま後ろへ体が吹っ飛ばされる。
巨体がくの字に折れ、真後ろの木の幹に激突した。
バキバキバキバキバキバキッ、ズドン!!
バーベキューボアは動かなくなってしまった。
体から湯気が出るように放った魔力が消えてしまうと、完全に命がこと切れている。
「ふぅ、倒せた倒せた」
ピクリとも動かなくなってしまったバーベキューボア。
私はその傍らに寄ると、腰に手を当てる。
勝ち誇る訳じゃないけれど、もう一回グゥーとお腹が鳴った。
「あっ、また鳴った」
魔力を使うとそれだけ体力を使う。
体力を使うってことは、余計にお腹が空く。
食欲が暴走しそうになると、口から涎が垂れた。
「これで私のお腹も少しは満たされるよね。満たされないと困るけどさ」
私はバーベキューボアを解体することにした。
とりあえず素材の味を全開に引き立てることにする。
せっかくなら美味しく食べたい。それが私のポリシーだった。
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