第一章 白き世界の真ん中で

俺はひとりでに空いた扉の先へと一歩踏み出した。

一歩踏み出し、一歩、また一歩と扉の中を進んでいく。そこは、何もなく白い空間がただただ広がっていた。

どうやってここで記憶を取り戻すのだろうと不思議に思いつつ、数歩進んだところで急に扉が閉まり始めた。

「おいっ、どういうことだ⁉︎」

慌てて、叫ぶがもう遅いと言うようにあたり一面の白に虚しくこだましてやがて消えていく、、、、

「くそっ!やられた、、、、」

(閉じ込められたということは、俺は扉に食われたのか、、、?)

攻撃が来るのかと思い、咄嗟に身構えるが、いくら経っても攻撃してくる気配がない。

(ん?攻撃が来ない、、?じゃあ食うことが目的ではないのか?)

一旦落ち着いて、警戒を解いてみる。しかし、攻撃が来る気配がないので心配する必要はないだろう。

しかし、ここで新たな問題が出て来た。今のままでは、外にも出られない。俺はここで餓死するのだろうか?いや、、、そもそもここは腹が減るのだろうか?

俺が思考を巡らせていた時、

「あはっ、君やっぱり面白いねぇ」

突如として、笑い声と共に楽しそうな女の声がした。

俺が頭の混乱しているうちに彼女?はまた喋り始める。

「君、急に扉を閉めたらめちゃくちゃ焦り始めるんだもん。笑うの堪えるのに必死だったんだよ?」

どうやら俺は、手のひらの上で踊らされていたらしい。

怒りを押し殺して、話しかけてみる。

「おまe,,」

「グラバドーラと呼んで」

「失礼、グラバドーラはどうして俺をこの空間に閉じ込めているんだ?」

「監禁とは人聞きが悪いなあ〜もう!君をここに呼んだ理由はさっきも話したように記憶を取り戻してもらうためだよん」

「ここには何もないようだけど」

「それはまだ準備してないだけだよ〜」

ほんとかよ

「じゃあいつ準備できるんだよ?俺は元の世界に帰れるんだろうな?」

「もぅ、そんなせかさないでよぅ〜すぐに見せてあげるからさ⭐︎」

そう彼女が言った瞬間、何もなかった目の前にとてつもなく大きく見上げても頂上が見えないようなレベルだ。そして、木の根付近には、どうぞ入って来てくださいというように豪華な金で装飾された扉が嵌め込まれていた。

俺は驚きつつも、いや準備できてんのかいと思いながら見上げていた。

「さあ、どうぞ〜ようこそ我が家『ユグドラシル』へ!」

(ユグドラシル?確か北欧神話に出てくる世界の中心に生え、世界そのものとまでさえ言われた世界樹のことか?いや、そう名付けているだけで実際は偽物なのだろう。)

そんなことを考えながら、俺は木に設置されている扉に手をかけて扉を開き中へと進んでいった、、、、、

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