no title
@hosikage0322
プロローグ 記憶はどこに、、、
何が起きているのだろうか
頭の片隅から何かがすっぽりと抜け落ちた感覚だ。それはまるで何かを失ったような、はたまたそもそもそこには何もなかったような、、、、、
さっきまではなんともなかったのに。喪失感というのはこういうものなのだろう。
やっぱり気になって、今日起こったことをもう一度思い返してみる。朝起きて、朝食を食べ、学校に行って、、、、、そして帰ってきた。うんいつも通り、、、のはず。気にしないようにすればすぐに治るはずだ。俺は、考えても仕方ないと思い、誰もいない家のキッチンへと向かう。廊下はキシキシと軋み家の中でこだまする。両親は、もう5年前、、、それこそ遠い昔に事故で他界してしまった。当時の俺は12歳。両親は結構成功していたみたいで幸俺には莫大な遺産が転がり込んできて路頭には迷わなかった。それでも齢12歳で両親を同時に失うというのは相当キツく学校にも当分の間行けなかった。流石に5年も経てば気持ちも整理できて慣れてきたが。2階の俺の部屋から降りようとした時、俺はある違和感に気がついた。家の中が何かおかしいのだ。見た目ではなにも変わってないのだが、何かが違う。息がしづらい。呼吸が乱れる。心拍数が上がる。何かに押しつぶされているようだ。階段を降りれば降りるほど、息が苦しくなっていく。階段を降り切りキッチンの方を振り向くと、その違和感の正体が姿を現した。キッチンに向かう扉。確かに扉は扉だ。しかし、明らかに種類が違う。例えるならば、ネズミと虎だ。それは地獄の門のような風貌を醸し出しながらそこに居座っていた。
「これは一体なんなんだ?」
俺は反射的に言葉がでしまった。
返事が返ってくるわけもないのに、、、
「やあ、ここは世界の記憶が眠っている場所。通称「ユグドラシル」さ!」
あれ、、、幻聴か?しかも何故かわからないけどさっきまでの息苦しさは一気に消えて、体も軽くなってきた。
「あの〜無視しないでいただきたいのですが〜」
うん、幻聴だ。扉が離すわけがない。
「そろそろ反応してもらってもいいかな?僕が1人で話しているみたいで恥ずかしいじゃないか!」
「あ、、、なんかすいません」
反射的に反応してしまう。1人の辛さはよくかる。何故わかるかは、、、うん秘密にしておこう。
「やっと反応してくれた〜正直見えちゃいけないものが見えていたのかとおもってヒヤヒヤしてたよ〜」
「いや勝手に殺すなよ、、、」
確かにすぐに反応しなかった俺も悪いわけだが
「ふふふ、冗談さ。君をいじるのは案外面白いね」
いい迷惑だ。こっちは気分が悪くなったかと思いきや急に扉が現れて、しかもその扉が話し始めるとかいう理解不能のオンパレードなんだから、、、
「おや?浮かない顔してるねぇ。しっかり笑わなきゃダメだよ?ほら【あいつ】もそう言ってただろ?」
「【あいつ】?誰のことだ?」
俺に知り合いなんていなかったはずだが、、、
「いやだなぁもう。ボケるのはその辺にしておいて」
扉は俺が分かっているのにボケていると思っているらしい。口調はおどけているような誰かをからかうような感じだ。
「いやほんとに誰なんだよ?【あいつ】って」
俺がそう返した瞬間また、周りの空気が重くなりさっきの息苦しさが戻ってくる。
「それは本気で言っているのかい?嘘だったなら今すぐ訂正することをおすすめするよ。何するか分からないからね」
胸が苦しい。息ができない。
何故俺は知らない扉に知らない事でこんなことをされなければならないんだ。
俺の中で何かが切れる音がした。
「いい加減にしてくれよ!!俺は何も知らないし、そもそもお前は急に現れてなんなんだ!!」
そう、叫んだ後にハッと口を覆う。
言ってしまった。俺はどうなるかもう分からないだろう。強大な力を持つ扉を怒らせてしまったのは間違いない。もう潔く諦めるか。逆に冷静になり始めていたところ、扉から返答も攻撃もないのに気がついた。
「あの〜扉、、、、さん?どうしました?」
おそるおそる聞いてみる。
「お前、、、、、本当に何も知らないんだな?」
再度確認されるが俺は本当に何も知らないので
「ああ、何も知らない」
と答える。
その答えを聞いた扉はまた沈黙してしまった。
その間にもまさか、あの時か?いやどうなのだろうか?と呟いているように聞こえる
少し経ってから扉が何かを決めたかのように話し始める。
「そうか、、、ならば記憶を取り戻す手伝いをしてやろう。しかし、私がするのは手伝うだけで最終的にはお前自身が見つけなければならない。ましてや、その記憶を取り戻すとお前のこれからの人生が180°変わるかもしれん。これを聞いてお前は記憶を取り戻したいと思うか?」
記憶を取り戻す?なんの話だ?
内心俺はそう思いながら断ろうとした時
「ああ、それでも構わない」
と俺の意思とは関係なく、口から言葉が漏れていた。
それはまるで、雨の中で水が跳ねるかのように自然で一瞬のことだった。
ただ、俺はその言葉を取り消そうとはしなかった。何故だかわからないけど取り消しちゃダメな気がした。
「いいんだな?記憶を取り戻しても。生活が変わっても。」
扉はそう問いかけてくるが俺には全く響かない。
「ああ、もちろんだ。どうせ元々俺は5年前両親が死んだ時点で終わってんだ。これ以上失うものはない!」
そう俺が答えたと同時にものすごい風と光と共に目の前の扉が開いた。
「さあ、進みなさい。若きものよ。記憶を取り戻せるように応援していますよ」
その声を最後に俺は扉の向こうへと足を踏み入れた、、、、
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