第23話
「アンドリュー、そんな悲しい顔するなよ」
レオが僕の頭を優しく撫でてくれる。まだ小さかったレオに僕がよくやっていたのと同じだ。
「俺がアンドリューを守るから。死ぬまでそばにいるから」
「ち、ちょっとレオ!?」
突然レオが僕のことを思いきり抱きしめてきた。レオの大きな胸板の感触を頬に感じた。
「わかった、わかったからレオ」
僕はすごく照れくさくなってレオの体を押し返した。
「ハハッ、顔真っ赤だぞアンドリュー」
「へっ!?」
「アンドリューも同じことを俺にやってたじゃん」
ああ、そうか、そういうことか。小さい頃僕は確かにすぐにレオを抱きしめていた。嫌がっていたレオを無理矢理。あれの仕返しのつもりなのか。
「あれはレオが小さかったからだろう」
「すっげえ恥ずかしかった。これでわかった?」
「ああ、わかったよ」
今度は僕がレオの頭を撫でた。前と違ってレオの髪の毛はサラサラしていた。
「でもさ、そもそも吸血鬼専門のカレッジとかがあるからダメなんだよな」
「ん?」
「人間と吸血鬼をわけてる。どうして一緒に勉強できないんだろう」
「ああ、それは僕も以前考えてみたことがあるよ。吸血鬼のほうが頭もよくて知識も豊富だろ? 一緒に勉強しても吸血鬼にはかなわない。それだと人間が劣等感を抱いてしまう。だからわけたんだと思うよ。人間のためにね」
「やっぱり人間のためか」
「仕方ないよ。この世界には人間のほうが圧倒的に数が多い。だから人間のことを優先して考える世の中なのさ」
「ふーん。数がねえ」
「まあ、それだけじゃないだろうけどね。吸血鬼がもっとよりディープに勉強できるように特別に作ったのも本当だろうし」
吸血鬼専門カレッジがあると知った時、僕は本当に羨ましいと思っていた。あらゆる分野の勉強ができるのもそうだけど、やっぱり寿命が長いということが一番羨ましかった。どうしても人間は死について考えてしまう。不老不死なんて夢物語だと思っていたけれど、こうやって身近に吸血鬼という恐ろしく長く生きる生物がいるのだから羨ましいと思うのは当然のことだろう。
「アンドリューも吸血鬼だったらよかったのに」
レオがつぶやくように言った。
「僕? 僕は人間でいいよ」
「でも、もしも吸血鬼だったらずっと俺と一緒にいられるんだぞ」
「あはっ。そうかもしれないけど、長く生きていればつらいことも悲しいこともたくさん見なきゃいけない。そりゃあ楽しいこともたくさんあるだろうけど、やっぱり僕はこれくらいの寿命がちょうどいいと思ってるよ」
そう言うとレオは黙ってしまった。
「レオ?」
レオが黙っている時は何か考えているか誰かとテレパシーをしている時だ。そうか、吸血鬼になればテレパシーもできるようになるのか。便利だよな。でも僕ら人間はどうやっても吸血鬼にはなれない。それが現実なのだ。
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