第14話
僕の自宅の間取りを紹介しておこう。クリニックの横の階段を上って左側にあるドアを開けるとまずリビングだ。と言っても前に広いワンルームみたいだと説明したように壁などの仕切りはない。入ってすぐ右手にソファーと小さなテーブルとテレビが置いてある。来客用だから僕はほとんど使っていない。左手にはバスルームとトイレと洗面台と洗濯機。その横にクローゼット。奥に進むと右手には大きな本棚が二つ並んでいてその前にパソコンを置いている僕のデスクと椅子がある。書斎のような場所だ。本は医療に関しての本と吸血鬼に関しての本と、それに吸血鬼用にと販売されている人間に関する本だ。大量に並んでいる本はまだ読んでいない物も多いから、休日はこの椅子に座ってたいてい本を読んでいる。
その奥の壁際に大きなベッド。左手には広いダイニングキッチンだ。日々の食事もそうだけど、ここで吸血鬼用のサプリを考えたり作ったりして研究しているからパントリーは一人で住んでいるとは思えないほど物で溢れている。そして奥には大きな冷蔵庫があって、壁との隙間、パッと見はわからないほどの狭い場所にドアがある。このドアが特別診療部屋と行き来できるドアだ。ドアを開けると畳一畳ほどの狭い廊下がある。壁があるからコの字型とは言えないかもしれないけれど、コの字の空いている部分だと思ってもらえればいい。真っ暗だからあるのは小さな壁掛けランプだけ。目の前のドアを開けると特別診療部屋となっている。
僕は今特別診療部屋側から自室に入ってきた。入ってすぐに目に入るのは奥の大きなベッドだ。ベッドは特に何も異常はなかった。そしてこの大きな冷蔵庫の前に出た時にキッチンの異常に気付いた。
カウンター越しに部屋を見渡すけれど音もしないし誰かがいるような気配もない。泥棒だとして、もうすでに出ていったのか。考えてみると僕のこの家には盗られるような貴重な物は何もない。あるとすれば大量の吸血鬼用のサプリだけれど、さっき見た限りではそっくりそのまま残っていた。ならば犯人は吸血鬼ではなく人間なのか。パントリーをあさって何もなかったから諦めて逃げたのか。僕は深く深呼吸してから持っていた銀の棒を置いてキッチンから出た。
一応バスルームも覗いてみたが異常はなかった。リビングも何ら変わりない。本当にキッチンだけあさって出ていったのだろうか。不思議に思いながらも、鉢合わせしなくてよかったと胸を撫で下ろしながらキッチンに戻ろうとした時だった。ぎっしりと隙間なく埋め込まれているはずの書斎の本棚に隙間があることに気が付いた。本棚もあさったのか。そう思いながら書斎に近付いた。背を向けていたデスク用の大きな椅子に手をかけた。
「あっ」
幅広い背もたれで見えなかったのだ。椅子の上にちょうどすっぽりと隠れるようにしてレオは座っていた。レオはその体には大きな本とピンクの水筒を抱えたまま眠っていた。
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