書く習慣
殻斗あや
『冬は一緒に』
車のエンジンを切り、ここから先は歩くのだと悟る。実家の帰省もド田舎出身の私からすると凄くつらい。だが毎年恒例というのもあり、一人暮らしを始めて3回目ともなれば少し離れてくるものである。今年は珍しく雪があまり降っておらず3〜4cmほどしか積もっていなかったが、大学の友達はこれくらいでもビビるんだろうなと思うと、少しだけ優越感を感じるものである。
「おかえりー!」
白い息とともにお母さんが階段を降りてくる。
「あー久しぶり!」
「いや、またでかくなったんじゃないの?」
「もうそんな歳じゃないわ。ボケてるやんw」
「まだボケてないよぉ」
そう言ってお母さんはまた階段を登っていく。元気ではあると思うけど、最近膝が悪そうで心配だ。
「大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
…ならまだいいけど
「あ、お父さんに挨拶していきなさいよ!」
「わかってるよ!」
そう言って私はお母さんに次いで、ギシギシと引き戸をスライドさせる。
「うわぁーなつ」
いつもは毎年お盆にも帰省できていたのだが、今年は用事でたまたま帰れていなかった。
「お父さん」
そう小さく呟いて、上着を脱ぎ、私は仏壇の前で手を合わせる。
「よし」
その声を合図にしたように後ろ側からお母さんの声が響く。
「みかん食べる?」
「えー食べる!」
そう言って立ち上がろうとした時に少し体が固まっていることに気づいた。厚着をしていたから気づかなかったが、外は相当寒かったようだ。
「おととと」
右手を支えに立ち上がり、私はみかんの元に向かって歩みを進めた。左手の方は少し赤くてジンジンしていた。
書く習慣 殻斗あや @Aya_wears_a_hat
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。書く習慣の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます