第14話 制服管理庫
カフェテリアで昼食を取ったのちに
私服なので本部内では少々目立ちはしたが、バングルがないと出入りできない軍部において中に入れた時点で軍関係者という認識なのか声を掛けられることもなく地下へと降りる。
「ミーアさーん!リアム・ラングレンでーす!いますかー?」
リアムが誰もいない受付から声を掛ければ少し遠くから「ちょっと待っててー!」という返事が返ってきて、唯舞達はそのまま受付で待つことになった。
二、三分ほどでガタガタと台車を押す音と一緒に一人の女が姿を現す。
あちこち跳ねた髪を無理矢理ひっつめ、ヨレヨレのシャツにジーパンといったかなりラフないで立ちの彼女はリアムを見るとにこーと破顔した。
「ごめんごめん、リアム。待たせたね。……彼女がイブちゃん?」
「はい、そうです。イブさん、こちらが軍の制服の管理をメインにおこなってくれてるミーアさんです」
「初めまして。えと、唯舞・水原です」
ぺこりと唯舞がお辞儀をするとミーアは物珍し気に目を細めつつ、穏やかに微笑んでくれる。
「うん、エドから話は聞いてるよ。アルプトラオムは男ばっかだからね、何か困ったことがあったらあたしの所においでね」
よしよしと受付越しに頭を撫でられ、唯舞は小さく首を傾げた。
「エド?」
「あぁごめん。エドヴァルトのことだよ、あの胡散臭いグラサン。あたしはあいつと同じ士官学校同期だから、何か変なことされたらすぐ言いにおいで。ソッコーであのグラサン叩き割るから」
ニッといい笑顔でサムズアップしながらミーアは笑う。
同意するようにリアムもうんうんと頷いた。
「大佐は万年彼女募集中の男ですからね。イブさんも気を付けて下さい」
「は、はぁ……」
「顔と体だけは一級品なんだけどねーエドは。中身が残念じゃなきゃ彼女の一人や二人や三人や四人は出来るだろうに」
「階級も大佐なのに、中身が残念過ぎて誰も寄ってこないじゃないですか、あの人」
「ほっっっんと惜しい男なんだよねー」
リアムとミーアが同時に深いため息をつく。
唯舞はなんとなくエドヴァルトのあの扱いの意味が分かってきたような気がしてうーむと考えた。
(見た目は大人、中身は子供?ん?なんか違う?)
どこかで聞いたことのあるような無いようなフレーズが浮かんだのだが、よくは思い出せなかった。
「まぁあいつの事はどうでもいいや!イブちゃんの制服だね、ちょっと待ってて」
パチンと両手を鳴らして、ミーアは切り替えるように後ろに並んだ膨大な量の制服の中から、よくクリーニング店で見かけるようなビニールに入った何着かを引っ張り出す。
「とりあえずジャケットとシャツとスカートで基本のワンセットね。他がブーツと靴下とコートと、帽子……はあんまり使わないかもしれないけど一応渡しておこっかな。黒服の非戦闘員女の子の軍服ってあまりないから、デザインがシンプルで申し訳ないんだけど……まぁ、リメイクしたくなったら私がバレないようにカスタマイズしてあげる」
「黒服……ですか?」
唯舞のその言葉に忘れてたとばかりにリアムが目を開いた。
「あ、しまった……イブさんにはまだ制服の説明はしてなかった。えっと、軍には白服と黒服という二種類があって、簡単に言えば白服がこの本部及び国内の治安維持、黒服が戦闘区域での実動部隊なんです」
「こらこらリアム君ー?黒服と白服は仲悪いんだからちゃんと教えとかないと大変だよ~?」
「すみません、ついうっかりしてました」
リアムの様子にミーアはジト目で睨む。
同じ軍人なのにそんなに白黒で派閥みたいなことがあるんだろうか?と唯舞は疑問を投げかけた。
「え、と。白服と黒服で、そんなに仲が悪いんですか?」
「悪い悪い!もう会ったら笑えるくらいにバッチバチよ?」
ケラケラと他人事のようにミーアは笑う。
詳しく聞けば、「国内の安全地域にいて命令だけ寄こす白服は何様だ!」という黒服と「戦うだけしか能がないくせに!誰が国内を守っていると思っている!」という白服との間柄らしい。
なるほど、昔あった警察モノの映画のように現場と本部でめちゃめちゃ揉めているやつか、と唯舞は人知れず納得した。
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